立岩・荒船山(経塚山)
たついわ・あらふねやま(きょうづかやま)
1,422.5m

西上州
南牧村
 南牧村の奥に入って行くと、狭い渓谷の中に石垣を積み上げて家が建っている。また山の斜面には猫の額ほどの段々畑が累々としている。こうした山村の風景には妙な懐かしさを覚える。南牧川に沿って県道93号線を入って行く。蝉の渓谷を過ぎると道幅が狭くなり対向車にも注意が必要だ。南牧川沿いの集落は川沿いに石垣を積んで家を建て、山腹に段々畑を営む暮らしを続けてきたようだ。いつの時代から人はここに住み着いたのだろうか。農耕を営み土地とともに生きて来た日本人の生活様式からすれば特異な例ではないだろうか。南牧村の集落の多くは限界集落であり、いずれはその風景も姿を消していくのだろう。
 南牧村の山は登山口に向かう途中の山村風景が実に良い。そして南牧村の山の多くは特徴的な岩峰を持つ。羽沢から学校跡地を利用した南牧村資料館前を右折して星尾川沿いに道を進める。吉祥寺のところを左折して道なりに行けば大上集落に出る。この集落の背後に立岩の大岩壁が聳えている。この風景が西上州のドロミテと呼ばれるらしい。大上集落から仰ぎ見る東西2つの立岩の大岩壁は見事の一言に尽きる。杉檜の植林帯と雑木林の上に岩峰がニョキッと頭を出している。かつては鎖も整備されておらずに熟達者のみ登れる山だったようだ。今では核心部には鎖やロープが整備されて周回できる山になっている。この季節、訪れる登山者も少ない静かな山歩きを楽しんでみよう。
登 山 日 2024年01月12日(晴れ)2001年12月23日の記録
メンバー しんぷる
行  程 線ヶ滝登山口09:40…09:48立岩分岐…11:00▲立岩11:13…11:47威怒牟機不動下降点…12:18立岩入口…12:55▲荒船山13:22…13:26経塚入口…13:35星尾峠13:38…14:00田口峠分岐…14:06イモリの滝14:13…14:40荒船山分岐…15:00立岩分岐…15:05線ヶ滝登山口
yamap ルートマップ
大上の集落に入ると、目の前に立岩が堂々とした姿を現した。何度か見た景色だがやはり思わず車を停めて写真を撮ってしまった。立岩橋、線ヶ滝橋を過ぎて登山口に着く。線ヶ滝登山口前の広場にはそこそこの台数の駐車が可能だ。今日は一台の車もなく久しぶりに静かな山歩きを楽しめそうだ。
道標は荒船山、立岩の二つが示されている。道標に従って登山道に入って行く。直ぐに荒船山への分岐を右に分けて威怒牟幾不動方面へと向かう。更に数分で立岩への分岐だ。1.8km中級者向け(直登)とある。このコースは下りを採ると上級者コースとなる。

線ヶ滝登山口

手入れがされた杉林

登山者守り地蔵

杉林を抜けると明るい雑木林
杉の植林帯を進む。枝打ちされて登山道に散乱する杉の枝が邪魔だ。手入れの行き届いた植林杉を眺めながらジグザグと登っていく。時折吹く突風で枝がこすれてギイギイいると音を立てている。暗いスギ林を抜ければ落葉した明るい雑木林に出る。かつては立派な丸太階段があった道を行けば再び杉林だ。朽ちた丸太階段を上っては右方向に進むこと数回でわずかに南方が開けたベンチに着く。

落葉が堆積している

急登を終え最初のベンチ
一息つくにはちょうどいい場所だ。再び歩き出す。杉の林から解放されると立岩の基部に近くなったことがわかる。落葉した美しい雑木林を進んでいくと立岩の核心部に着く。どこからか風の音が聞こえる。

再び急登 長いロープが付けられている

核心部のルンゼ 風が吹き上げる
ロープが設置された急な直登を過ぎて間もなく立岩の取り付きに入る。ザレた急なルンゼには一直線に新しい鎖が付けられている。浮石が多く落石に気を使いながら一気に上って行く。鎖がなければ相当難儀する場所だろう。ルンゼを上り終えると、右手に人の肩幅ほどのバンドが続いている。しっかりと左手で捕まって慎重に上がって行くと東峰との鞍部に着く。そこにはベンチが置かれ<山頂0.5㎞>との道標もある。緊張感から解放され小休止をとった。前回は東峰に行ってみたが今日はパスだ。

ルンゼを登ると右にバンド

バンドを超えると東西立岩の鞍部に出る
ベンチが置かれ一休み

ベンチが置かれるところは展望がいい
道標に従って階段を行くと快適な尾根歩きだ。一旦尾根を外れ北側の日陰へと入っていく。わずかで暗い谷を抜け5m程の鎖を上ると待望の稜線に出る。そこは丁度肩に当たるところでベンチが置かれている。眼下を見下ろせば大上集落が一望だ。一気に展望が開け東立岩も眼下だ。ゆっくりと展望を楽しみたい。そこからわずかで山頂に着く。山名板の立つ西立岩の頂上も展望が楽しめる。

木彫りの地蔵が残っていた

西立岩の頂上

経塚山が目立つ 遠景は浅間山

武尊山が見える
真っ白な浅間山が見事だ。兜岩山のローソク岩から始まり経塚山そして毛無岩~トヤ山~黒滝山へと続く稜線が一望である。

谷川主稜線も見えるぞ

デッカイ浅間山

八ヶ岳は雲の中

兜岩山から経塚山

今は廃道となってしまったプロムナード

からの展望も最高だ
山頂先のベンチからは西上州の山々の展望が見事だ。経塚山から黒滝山までの稜線が一望で、その先には小沢岳や桧沢岳が、そして稲含山が大きい。毛無岩の岩壁が見事だ。上空は風があるようで冬らしくゴーゴーと音が聞こえる。登山道も場所によって風の通り道となっていて寒く感じる。十分に展望を楽しんだし経塚山に歩を進めよう。

両神山

東立岩と大屋山
ピークからは北側に向かってクサリの付いたやや急な下りを降りていく。日陰で雪が残っているため滑らないように慎重に足を進めていった。ぐっと高度を下げて振り返れば立岩の岩壁が聳えている。積雪もなくなり快適な道となってきた。落葉の堆積した道はサクサクと心地よいがその下に危険が潜んでいることも。

ここを登る

立岩を振り返る

熊にやられたのかな
行塚山方面に向かう
雑木林の中を快適に下って行くと目の前に突然、鎖付きの岩峰が現れた。左側には何となくエスケープルートがあるように見えるがテープもない。西上州の山でルートを失うことは大変なことになるのだ。地形が複雑だし山は連続し、突然の岩峰や深い沢などもある。ただでさえルートファイングが必要な道も多いのだ。平行した2本の鎖を掴んで岩場を上る。すると鎖付きの痩せた尾根になる。右側に落ちれば命はなさそうだ。左側には鎖が設置されている。やがて経塚山への道標が現れ道標に従い経塚山に向かう。

気持ち良い尾根

雪が残る階段

黒滝山不動寺とある 昔の道標だな

雪が出てきた たまらずチェンスパ
すでに廃道となってしまったようだが道標にあるように、この辺一帯には遊歩道が整備され黒滝山までの縦走ができたようだ。道標を過ぎると北側には雪がある。さすがに危険を感じてチェーンスパイクを付けた。これで谷川にずり落ちることはないだろう。

経塚山への急直登

経塚山に着いたようだ
やがて目の前に今までと違う景色が出てきた。岩が露出し明瞭な道はない。ここを登れば経塚山だ。登りだすときつい。直ぐに息が切れてたびたび立ち止まっては呼吸を整えながら登っていく。それもわずかで経塚山に着いた。風の音だけの誰もいない山頂だ。風を避けて山頂の一角に腰を下ろして休憩とした。山頂からの展望は立ち木に遮られてあまり優れない。

荒船山社

下りは雪がある
山頂には<第三十三回国民体育大会 炬火名 荒船の火>と書かれた標柱が置かれていた。

行塚山とある

こんな道だけなら楽だけど
山頂からは積雪の坂を星尾峠に向かって下っていく。頂上台地はうっすらと積雪がある。こちらには雪上に踏み跡があり荒船不動や内山峠からの登山者のものだろう。線ヶ滝からの登山者は非常に少ないようだ。

星尾峠まで下ってきた

星尾・線ヶ滝の道標に従って
星尾峠には直ぐに着いた。直ぐ先の線ヶ滝への分岐を下っていく。え、ここを下るの?的なロープが垂れ下がった急な斜面だ。道は今までの尾根歩きと変わってあまり気持ちの良くない谷間の道となった。明瞭な道とはいえずピンテを頼って歩いていく。

道が荒れてる

威怒牟畿不動に寄りたくて線ヶ滝方面に(失敗)
やがて田口峠への分岐道標に出た。威怒牟畿不動を通ると勘違いして線ヶ滝方面に下ってしまった。イモリの滝というのもあるし見てみたい。でもこれは大きな過ちだった。昔の記録を見てみると2006年にここを下っている。道標がしっかりとしていて、なかなかよく整備されている印象を持ったとある。しかし今は全く違う。道標の一部は朽ちて全く用を足さない。ピンテがなければ遭難しそうだ。もはや廃道に近いものがある。イモリの滝付近で道(ピンテ)を失い遭難の危機に陥った。

イモリの滝 この近くで迷う

東屋がある

ピンテなければ遭難だった

もう安心
何とか道を見つけ難を避けられたがちょっと焦ってしまった。いくつもの沢筋を超えて歩いていくと立派な東屋が見えた。さらに進むと威怒牟畿不動との分岐に出た。なんと威怒牟畿不動は300m戻らなければならない。すでに時間切れであり断念だ。何のためにこの道を選んだのかわからなくなった。こんなことならば田口峠方面へ進んで途中から線ヶ滝方面に直接下ればよかった。

立岩分岐まで戻る

大上集落からの立岩
立岩中級コースへの分岐を分け登山口に戻った。立岩は西上州の魅力満載の山だ。アキレス腱が伸びきるほどの急登、岩場・鎖場、痩せ尾根の稜線など西上州を代表する山だと思う。黒滝山への遊歩道が廃道になったように、立岩登山道は近いうちには南コースから威怒牟畿不動へ下る周回コースが残るだけになりそうだ。人が歩くから道となるのだ。

線ヶ滝

線ヶ滝の由来
時間に追われていたが折角だから線ヶ滝に寄ってみた。

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