実に十年ぶりの折立。季節もちょうど今頃。折立の薬師岳登山口駐車場は満車状態。何とか一角に駐車。目の前のキャンプ場は閉鎖されていた。コロナの影響なのかなと簡単に考えていたが、まさかの熊遭遇になるとは。見覚えのある道を歩き出す。 |
広い駐車場は一杯 薬師岳登山口 |
ヒノキの巨木にパワーをもらって |
樹林帯を抜けた |
有峰湖が見える |
歩き出しが遅いせいか近くを歩いている登山者は少ないみたいだ。足元はぬかっていてズボンの裾を汚す。展望がない、花がない樹林帯をわずかな紅葉に慰められながら歩いていく。ジグザグと登っていくと傾斜も緩み樹林帯から解放された。直ぐに青淵三角点だ。ここで早めの軽いランチ。北を見れば大日岳から劔・立山連峰の眺めがよい。出合う登山者は少ない。次のポイントは五光岩ベンチだ。 |
五光岩ベンチからは薬師岳が望める |
太郎兵衛平へと続く道 |
樹林帯を抜ければ過剰に整備された道になる。しかし、時の流れとともに朽ち果てて、やがては再整備が必要になるのだ。石畳のように整備された登山道は荒れ果て、集められた石が歩き辛さを増す。端にどけて貰いたいくらいだ。部分的にではあるが再整備が始まった箇所もある。完成すればだいぶ歩き易くなりそうだ。登山道の長さが山の大きさを感じさせる。 |
本日の宿泊地太郎平小屋の前 黒部五郎岳は雲の中 |
薬師岳 とても大きな山塊だ |
展望が楽しめるようになってきた。既に見頃は過ぎて茶色になってしまった草モミジでも充分に楽しめるなあ。五光岩ベンチで休んでいるとソロの若者君が大きなザックを担いで降りてきた。記念写真を撮ってもらってから訊けば嬉しそうに、この山域に5日間入って雲ノ平周辺の山々を歩いてきたと言う。羨ましいなあと返してわずかだが一緒の時間を過ごした。やがて太郎平小屋に着いた。 |
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小屋近くから見る満天の星は実に素晴らしかった。真夜中過ぎには冬の星座が手が届きそうな高さに輝いていた。そして二日目の朝。 |
二日目の朝 快晴 北ノ俣岳を目指す |
所々に池塘がある |
天気は予報以上の大快晴!(^^)!。気持ちが昂ぶるなあ。皆嬉しそうに薬師岳を、あるいは黒部五郎岳を目指して歩き出す。そして下山する人も。どこが黒部五郎岳なのかはっきり認知もできずに歩き出した。まあ、あそこだろう。少し冷えたね、池塘には薄氷が張り、指出し手袋では凍えてしまう。ダウンを着込んで朝日を斜めに浴びながら北ノ俣岳に向かって歩いていく。大展望の山歩きの始まり。 |
足元の赤色はチングルマばかり |
北ノ俣岳頂上 ケルンがあった |
日陰の木道は霜が降りていて滑りやすくてとても危ない。足を取られたら大怪我だ。しかし展望が途切れることのない登山道は気持ちがいい。北からの風が頬を撫でていく。朝日を前面に浴びながら北ノ俣岳に向かって歩いていく。北ノ俣岳は緩やかで懐の広い山だ。広々とした山頂からの展望が素晴らしい。続いて赤木岳、中俣乗越と歩いていく。いつの間にか風は止んで暖かい。 |
笠ヶ岳 乗鞍岳 御嶽山 |
中俣乗越からの展望
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振り返れば歩いてきた稜線が一望だ |
黒部五郎の肩への登りに入って北ノ俣岳を振り返る
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黒部五郎の肩 |
山頂はもう直ぐ |
黒部五郎岳を目指してハアハアとガレの道を登っていく。山頂だと勘違いして目指していたピークは黒部五郎カールへと下る登山道の一角だった。黒部五郎の肩には真新しい道標が置かれている。山頂は見えるピークのちょっと先にあった。山頂標柱がないのはわかってはいたが、さすがにちょっと寂しい感じがする。登山者3人が山頂からの大展望を楽しんでいた。 |
黒部五郎岳の山頂 標識が寂しい |
黒部五郎カールを見下ろす 遠く黒岳、鷲羽岳 |
槍・穂高連峰だ |
雲ノ平の向こうには 黒岳・鷲羽岳 |
太郎平小屋の弁当は「チマキ」3個と紙パックのお茶だった。ボリューム感はないが熱量的には充分なんだろうな。ゴミは少なく済んでよく考えているなと思う。山頂からの展望は素晴らしい。地図を見て想像していた黒部五郎カールのイメージは全く違っていて、穏やかで歩き易そうな道に見える。いいね、いいね、黒部五郎岳からの展望は想像以上の大展望だ。 |
薬師岳の右肩に劔・立山 |
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黒部五郎岳で記念の一枚 |
三俣蓮華岳 双六岳 |
飽きることのない山頂とも別れの時は来る。名残は惜しいが戻りましょう。北アルプスはやっぱりいいよな。来年は北アルプスで残る百名山2座の鷲羽岳と黒岳に登るしかないな。何度でも訪れたい北アルプスの山々。 |
肩から黒部五郎カール |
少ない紅葉 |
北ノ俣岳からの展望は素晴らしい |
弓折岳から笠ヶ岳への稜線をズームする |
帰路も展望を楽しんでいこう。ダラダラとアップダウンを繰り返して歩いてきた山だ。帰り道も長いぞ。帰路は帰路で気付かなかった風景もあるだろう。少しズームをしてみよう。槍ヶ岳、黒岳、赤牛岳などが画になるねえ。笠ヶ岳への稜線も実にいい。 |
最高の天気 |
振り返れば百名山4座が連なる |
槍ヶ岳にさようなら |
槍ヶ岳ズーム |
大天井岳をズーム |
大槍の存在感はすごい |
チングルマが色を添える |
広いぞ広いぞ |
帰路はソロ君たちに抜かれること抜かれること。ある者は大きなザックを背負い、またある者はトレラン姿であっという間に通り過ぎていく。我々と言えば亀の歩みのようにゆっくりと歩くことしかできないが、この山の大きさを全身で感じ、今まさにその中にいる自分がとても幸せに感じるのは悪くはないだろう。本当にいいよ、北アルプス。 |
ナナカマドの赤い実と薬師岳 |
草モミジ 池塘 薬師岳 |
太郎平に着いた |
生ビールで乾杯 |
長い長い登山道歩きも太郎平に着いて今日の日程を終えた。さあ、太郎平小屋の生ビールで乾杯だ。薬師岳が呼んでいるんだけどな。
そして3日目へ。 |
3日目の朝が来た |
草モミジが朝焼けに染まる |
小屋の前で朝日を待つ。地平線からの日の出ではないので全く感動もないが、それでも草モミジが朝焼けに赤く染まっていくのは光の存在を強く感じて晴々とした心持ちになる。小屋外の冷たい水で顔を洗えば生き返るようだ。日も上がってきて空が青くなってきた。 |
ハイカーも次々に出発 |
太郎平小屋の薬師の鐘を鳴らして |
小屋の荷物をまとめて小屋を出る。小屋前に吊り下げられている「薬師の鐘」を鳴らしてから下山を始めた。昨日とは違って暖かい。池塘には氷も張らず木道も濡れてはいない。朝日を背中に浴びて徐々に高度を下げていく。少し下るとベンチに腰掛けた若いソロ娘が元気に挨拶をしてきた。「こんにちは!…ばてちゃいました。」訊けばテン泊3泊4日で薬師、黒部五郎、雲ノ平を回って来たとのこと。ばてたと話す声には張りがあり満足感や充足感に満ちていた。素晴らしい時を過ごしてきたんだね。羨ましい。 |
青淵三角点近くから |
奥大日岳、劔、立山連峰が連なる |
標高を下げれば紅葉が楽しめる |
光に映えるなあ |
ガレ石で歩きにくい長い登山道を下っていく。徐々に上って来る登山者とすれ違うようになる。月曜だというのに関係ないな。青淵三角点を過ぎると紅葉が目を楽しませてくれる。相変わらず青空には雲がなく晴れ渡っている。遠くには白山が頭を出している。やがて樹林帯へと入っていく。初日ほどぬかってはいない。快適に下っていくとまさかの、熊。その距離10m位。ちょうど登山道に出たところらしく、こちらを見ると驚いた様子を見せて一目散に藪の中に逃げて行った。多くの登山者が歩いてきた道なのに出てくるなんて。登山者が多いからと言って安心はできないですね。比較的、冷静に見ていられたのが不思議だった。 |
赤に黄色に |
初めて遭遇‼ 熊には注意 |
長い帰路も終えて折立登山口に立った。駐車場は空いているかと思いきやほとんど変わりはなく一杯の状態だ。駐車場の傍らに「熊に注意」の看板が付けられていた。友人に言われて自宅に戻って調べてみれば、熊の被害が多発したことで昨年の夏からキャンプ場は閉鎖されていたのだった。遭遇した熊は駐車場で人間の食糧の味を覚えた熊ではなかったようだ。いずれにしても最高の天気に恵まれて、改めて北アルプスの良さを体感できた山旅となった。 |