立岩 たついわ 1265m 西上州 南牧村 |
南牧村の山は登山口に向かう途中の山村風景が実に良い。南牧村の集落の多くは限界集落であり、いずれはその風景も姿を消して行くのだろう。そして南牧村の山の多くは特徴的な岩峰を持つ。立岩は登山口のある大上集落から望むその山容が南牧村の山の中でも特に感動的だ。杉檜の植林帯と雑木林の上に岩がニョキッと頭を出している。かつては鎖も整備されておらずに熟達者のみ登れる山だったようだ。今では核心部には鎖やロープが整備され誰でも周回できる山になっている。この季節、訪れる登山者も少ない静かな山歩きを楽しんでみよう。 |
登山日 | 2016年1月10日(晴れ) | しんぷる、HK |
行 程 | 線ヶ滝登山口9:20…(ベンチ休憩)…10:30基部ルンゼ…10:40鞍部(東立岩往復)11:10…11:45西立岩山頂12:30…12:50小岩峰…13:25威怒牟幾不動13:50…14:30登山口 |
南牧川に沿って県道93号線を入って行く。蝉の渓谷を過ぎると道幅が狭くなり対向車にも注意が必要だ。南牧川沿いの集落は川沿いに石垣を積んで家を建て、山腹に段々畑を営む暮らしを続けてきたようだ。いつの時代から人はここに住み着いたのだろうか。農耕を営み土地とともに生きて来た日本人の生活様式からすれば特異な例ではないだろうか。限界集落の多い南牧村の山村風景はいつまで続くのだろうか。 | |||||
登山届の箱はあるが用紙は自分で用意? |
直ぐに荒船山との分岐 |
立派な丸太橋を左岸に渡る |
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羽沢から学校跡地を利用した南牧村資料館前を右折して星尾川沿いに道を進める。吉祥寺のところを左折して道なりに行けば大上集落に出る。この集落の背後に立岩の大岩壁が聳えている。この風景が西上州のドロミテと呼ばれるらしい。立岩橋、千ヶ滝橋を過ぎて登山口に着く。登山口前の広場にはそこそこの台数の駐車が可能だ。道標は荒船山、立岩の二つが示されている。道標に従って登山道に入って行く。 | |||||
歩き始めは杉林の日陰 冬は寒いね |
杉林を抜けると明るい雑木林 落葉樹の良いところだね |
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荒船山への分岐を左に分け威怒牟畿不動方面へと進む。分岐には熊やスズメバチに注意の立て札がある。直ぐに丸太橋を渡り立岩中級コースに入る。杉や檜林の日陰で、冬ほ時期であり肌寒く感じる。やがて陽のあたる明るい雑木林に変わり、かつては立派な丸太階段があった道を行けばわずかに南方が開けたベンチに着く。ここで一息つき、自家製の干柿を口にしながら昔の山行きを思い出していた。今回で3回目。前回が2007年だから実に9年ぶり。この山は一人で歩いたことはない。 | |||||
急斜面の直登 |
長いザレたルンゼ 落石に注意 |
途中から見下ろしてみる |
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朽ちた丸太階段に沿って歩いていく。ロープが設置された急な直登を過ぎて間もなく立岩の取り付きに入る。ここが最初の核心部になる。ザレた急なルンゼには一直線に新しい鎖が付けられている。かつては古い鎖が地面に置かれていただけだった。新たに整備されたものだろう。浮石が多く落石に気を使いながら一気に上って行く。鎖がなければ相当難儀する場所だろう。ルンゼを上り終えると、右手に人の肩幅ほどのバンドが続いている。こちらは前回と同様の鎖がそのまま付けられている。しっかりと左手で捕まって慎重に上がって行くと東峰との鞍部に着く。東峰には登山道がないと記されている(山と高原地図2009西上州)が踏み跡とテープが付いている。 | |||||
岩場を巻くバンド |
バンドを抜けると東峰との鞍部だ |
東峰(東立岩)から西峰(西立岩)を望む |
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萱の刈払い道を抜けると岩峰へと取り付く。特別危険な場所もなくテープを頼りに立木や木の根を掴んでは上がって行くと岩稜の上にでる。踏み跡もしっかりと着いているしかなり歩かれているようだ。東立岩の頂上からは両神山方面や八ヶ岳の展望が良い。当然経塚山から黒滝山へと続く稜線の眺望もよい。来た道を鞍部まで戻り西立岩を目指す。 | |||||
鞍部から西立岩に向かう |
ロープが設置 |
肩から大上集落を見下ろす |
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上がりは中級、下りは上級? |
木彫りの仏 |
山頂標註 西側の展望だけ |
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立岩0.5kmの道標に従って階段を行くと快適な尾根歩きだ。一旦尾根を外れ北側の日陰へと入っていく。わずかで暗い谷を抜け5m程の鎖を上ると待望の稜線に出る。そこは丁度肩に当たるところでベンチが置かれている。眼下を見下ろせば大上集落が一望だ。一気に展望が開け東立岩も眼下だ。ゆっくりと展望を楽しみたい。そこからわずかで山頂に着く。山名板の立つ西立岩の頂上は木枝が邪魔をして展望には優れない。 | |||||
兜岩山から経塚山の稜線 遠景は浅間山だが雪が少ない |
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頂上を通過すると直ぐにベンチがある。山頂稜線には計3ヶ所にベンチが置かれていることになる。ここからの展望もよい。経塚山から黒滝山までの稜線が一望で、その先には小沢岳や桧沢岳が、そして稲含山が大きい。毛無岩の岩壁が見事だ。また訪れてみよう。 ベンチを過ぎると急な斜面を北側に回り込む。道には雪はないが霜柱が立つ。ぐっと高度を下げ道を振り返れば立岩の岩壁が聳えている。 |
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遠景に両神山 |
右端は大屋山 遠景に小沢岳・桧沢岳、稲含山 |
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経塚山から黒滝山までの稜線 歩けるのかな |
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2本鎖の直登の次は痩せ尾根 右側は木が横たえられ滑落を防ぐ 左側には真新しい鎖が設置された |
痩せ尾根から振り返る立岩 |
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落葉の堆積した道はサクサクと心地よいがその下に危険が潜んでいることも。雑木林の中を快適に下って行くと目の前に突然、鎖付きの岩峰が現れた。左側には何となくエスケープルートがあるように見えるがテープもない。西上州の山でルートを失うことは大変なことになるのだ。地形が複雑だし山は連続し、突然の岩峰や深い沢などもある。ただでさえルートファイングが必要な道も多いのだ。平行した2本の鎖を掴んで岩場を上る。すると鎖付きの痩せた尾根になる。右側に落ちれば命はなさそうだ。左側には鎖が新設されている。しっかりと登山道の整備がされている山である。 | |||||
立派に整備されている 道標とベンチ |
落葉した明るい登山道 雑木林が良いね |
威怒牟幾不動に着く 本尊は吉祥寺に移され荒れ放題 |
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もう一度小さな鎖場を過ぎれば稜線の核心部は終わりだ。しばらくすると道標がある。威怒牟畿不動へはここから下って行く。快適な雑木林が続く。どんどん高度を下げて行けば不動尊前の東屋が見えてくる。不動尊は荒れ果て不動明王の石像がひっそりと残されていた。頭上のオーバーハングした岩壁からポタポタと水滴が落ちている。落下点は氷結していた。東屋で珈琲を淹れてもらい一息ついた。荒船山への分岐を何度か右に分けて登山口へ戻った。 | |||||
威怒牟幾不動の説明 随分と難しい漢字を当てているなあ |