甲武信ヶ岳・三宝山
こぶしがたけ・さんぽうさん
2475m・2483m
奥秩父
(山梨県・埼玉県・長野県)

甲武信ヶ岳は奥秩父山塊に中央に位置する奥深い山だ。シャクナゲ咲く時期に、千曲川源流から十文字峠へと周回してみた。
『奧秩父でも、甲武信より高い峰に国師や朝日があり、山容から言ってもすぐ北の三宝山の方が堂々としている。甲武信は決して目立った山ではない。にもかかわらず、奧秩父の山では、金峰の次に甲武信をあげたのはどういうわけだろうか。おそらくそれはコブシという名前のよさ、歯切れのよい、何かさっそうとした山を思わせるような名前のせいかもしれない。』
深田久弥氏の『日本百名山』より。
コース案内1
コース案内2
登山日 2010年6月5日(晴れ) しんぷるライフ
行 程 沼田IC(4:20)=毛木場P(7:10)…大山衹神社(7:30)…ナメ滝(8:30)…右岸へ(9:03)…千曲川・信濃川水源地標(9:30)…奥秩父主脈縦走路(9:50)…甲武信ヶ岳頂上(10:10-40)…三宝山(11:13)…尻岩(11:46)…武信白岩山(12:06)…武信白岩基部(12:23)…大山(12:55-13:00)…十文字小屋(13:35-14:00)…八丁坂ノ頭(14:20)…毛木場P(15:25)
 毛木平の毛木場駐車場は60台ほど止められるが満車に近い状態だ。番外地に止めるが、周りは白樺林となっていて新緑が丁度いい。コース案内板を確かめてから、車止めされている林道を歩きだす。程なく十文字峠との分岐を右に進む。道は大山神社を過ぎると登山道らしくなり、千曲川の左岸に沿って続いていく。

毛木場駐車場 白樺林が美しい

ミツバツツジ咲く千曲川の左岸を行く

大山衹神社を過ぎると山道となる
 落葉樹の林を抜けるとコメツガやシラビソの林となる。落葉に敷き詰められた道はふわふわで柔らかい。木漏れ日が心地よい。針葉樹林帯を抜けると白樺(岳樺)林となり、大いに明るくなってくる。青く苔生した倒木や岩肌が美しい。1時間の歩きで高度を300mほど上げる歩き易い道が続く。うっすらと汗がにじむ程度だ。高度を上げるにつれ白樺の新緑はなくなり、コメツガなどの針葉樹の葉が目立つようになる。

コメツガ林は足元ふわふわ

苔生す原生林

ナメ滝、山頂まで2時間とある
 千曲川に沿って苔生した道は続く。やがてナメ滝に着く。「甲武信ヶ岳まで2時間」と書かれた道標がある。歩き出して80分、まだまだ先は長いなあ。更に川に沿って左岸を進むと丸太橋が掛っている。この橋をサッサと軽快に渡って、右岸へと出るとシラビソとダケカンバの林だ。「至千曲川源流0.35km」道標から再び左岸に渡ると残雪が見られた。

丸太橋で右岸に渡る

幻想的なシラビソの原生林

千曲川・信濃川水源地標
 沢を歩くような感じで進むようになると、最初の目標である千曲川源流標柱が現れた。まあ、特に感慨はないような場所だ。コースタイムではここまで3時間となっている。歩き易い道のためか大分早く着いている。一息ついて先を急ごう。 さあ、ここからが急登となる。登山道は苔生したシラビソ・コメツガの原生林であり、何とも言えない雰囲気がある。急登もわずかで稜線へと出る。

奥秩父主脈縦走路に出る
立派な道だ

甲武信ヶ岳の山頂が見える

日本百名山甲武信ヶ岳2475m
 ここは奥秩父主脈縦走路であり、広く立派な道だ。反対側は国師ヶ岳・金峰山方面を指している。さあ甲武信ヶ岳に向かおう。縦走路は平坦でコメツガの細い若木がびっしりと生えている。樹林帯を進むと南側が少しだけ開いていた。出てみるとガレた急斜面の先に山頂標が見える。登山道に戻りガレ場を上ると待望の甲武信ヶ岳頂上に着いた。三角点はない。風が冷たい。標注が立つ石積みの陰に腰かけ昼食とした。

奥秩父山塊西部、国師・朝日・金峰方面

甲武信ヶ岳からは残雪の道を下る

甲武信ヶ岳を振り返る
 残念ながら、期待していた展望はさっぱりだ。南側はガスが深く展望はまるでない。主脈西側は国師ヶ岳、朝日岳、金峰山と続く山並みが見て取れた。その北には天狗山、男山が見える程度で、八ヶ岳は雲の中に隠れていた。北東は両神山、赤岩尾根と続く県境尾根がやっとだ。さあ、周回コースで三宝山に向かおう。
 山頂からは急斜面を下る。北斜面の登山道には残雪があり、一部凍結していて歩きにくい。80mほど標高を下げ三宝山への登りとなる。シャクナゲの回廊となるが花はまだない。途中に三宝岩の道標があるが通り過ぎてしまう。岩からの展望は良いと書かれているので立ち寄ってみればよかったな。

シャクナゲの回廊だが花はない

一等三角点が置かれる三宝山頂上

尻岩、道半ばと言ったところ
 やがて三宝山の広場のような頂上に着く。周囲はシャクナゲに囲まれているのだが…。山頂標識から西に少し離れたところに一等三角点が置かれている。展望には優れない。上空は雲が流れ青空が広がって来ている。さあ縦走路を先に進もう。三宝山からの下りは、苔生したシラビソ林で長く急な斜面が続く。鞍部に下りるとそこには尻岩の道標が。巨岩を見ると確かにそのように見える。ライフさんと笑う。
 再び上りだ。標高は上がったり下がったりで、なかなか高度を下げてくれないのだ。約100mほど上り返すと何やら踏み跡が…。予感がして踏み跡を辿ると、武信白岩山2288mの山名板がシャクナゲの藪の立ち木にひっそりと付けられていた。

武信白岩を背景に

両神山と赤岩尾根を遠望

大山頂上は展望がよい
 登山道に戻り先に進むと、鎖つきの丸太階段が岩に付いている。難なく上るとその先に白色の岩が見える。岩の頂上には三角点のような標注が見える。武信白岩のようだ。展望よさそう。こんな感じで岩峰が続くコースだ。↑↓で疲労が重なる。武信白岩の基部に達すると、登ってはいかんとロープで閉鎖されていた。落雷があり岩が脆くなって危険なんだそうだ。立派な道標を横目に大山を目指す。
 両神山方面の展望がよい。しかし、登山道は東が切れ落ち注意が必要だ。小ピークを越えると倒木が多く、木の根も張り出して歩きにくい。とにかく↑↓が多い登山道だ。足に負担が重い。朝から不調を訴えていたライフさんの膝がとうとう悲鳴を上げた。

大山から三宝山からの縦走路

大山から両神山~西上州の山々

賑わいを見せる十文字小屋
 大山への最後の登り。山頂からの展望は360度で大変良いが、今日は遠望がない。振り返れば三宝山の穏やかな山容、甲武信ヶ岳はその陰で見えないが、歩いてきた三国尾根?が望める。そして少しのシャクナゲが我々を迎えてくれた。展望を楽しんだ後で急な鎖場を下る。急な斜面は長くはなく、なだらかなシラビソの林となる。道は土で柔らかい。十文字小屋で足を休めよう。

乙女の森のシャクナゲ

八丁坂ノ頭、ここからジグザグと下る

落葉松林の新緑が美しい
 小屋周辺は植えたシャクナゲに囲まれている。ライフさんを残して乙女の森へと行ってみる。シャクナゲ群生地は5分咲き程度か。まあこんなものかなと急いで戻る。さあ尾根を外れ駐車場へと戻ろう。八丁坂ノ頭までは平坦でやさしい道だ。道標からは急な斜面をジグザグと下っていく。薪を担いだ登山者とすれ違うが、「重いでしょうが十文字小屋まで持ってきてくれ」とあるのだという。そんな紙が地面に置かれていた。水場を過ぎ、落葉松の林を抜け、千曲川を渡ると毛木平だ。お手軽に甲武信ヶ岳の山頂を踏むだけならば源流コースの往復がよさそうだ。
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