蟻ヶ峰
ありがみね
1978m
上野村
登山日 2009年10月11日(晴れのち曇り) しんぷるライフ
行 程 駐車場(9:00)…昇魂之碑(9:22)…登山口道標(9:35)…稜線道標(10:21-34)…蟻ヶ峰(11:09-12:00)…稜線道標(12:53-13:00)…登山口道標(13:30)…駐車場(14:00)
 昨年の土砂崩れで通行止めとなっていた御巣鷹の尾根への村道が8月に復旧となった。昨年春に足を運んだのだが通行止めで断念していた。登山道も事故後初めて本格的な改修工事があり、階段と手すりが増改築されたそうだ。しかし御巣鷹の尾根へと向かう気持は、なんだかとても複雑だ。慰霊登山をする人達に申し訳ないようで出来れば会いたくない気もする。しかし「山と高原地図 西上州」の著者である打田^一さんのコラムを読んで御巣鷹の尾根を登っても良いのかなという気になった。

事故後20年を迎えた「お巣鷹の尾根」2006年1月12日より一部引用
 しかし物見遊山の観光客でも、この道を歩き、無数の墓標や遭難者ゆかりの品々、写真などを目にすれば、厳粛な気持ちになり、事故の悲惨さに胸打たれ、再発防止の念を強くする。時の流れによる事故の風化を防ぐには、墓参への訪れも困難になりつつあるご遺族に代わり、多くの登山客を呼び込むことは、むしろ必要なのではないか。そんな考えをご遺族の連絡会の方にお伝えしたところ、ご賛同をいただいた。
「日航ジャンボ機墜落現場から蟻ヶ峰へ」 2006年08月01日より一部引用
 「昇魂之碑」が立つお巣鷹の尾根から県境尾根へは、「良い道が出来た」と聞いていたが、ガセネタだった。かつて私もここから県境尾根へ登り、蟻ヶ峰から舟窪を回り密藪の尾根を駐車場へ下ったが、その時と大して変わっていない。灌木をくぐり、またぎ、押さえつけられ、助けられつつの尾根上ダイレクトな急登はいかにも西上州らしいピッチだった。県境尾根に出ると三川、昇魂之碑、三国峠の三方を示す道標があったが、稜線上の踏跡は明瞭ではない。蟻ヶ峰へ向かったが、道形は不明でも木立の稜線に藪はほとんどない。長野側はカラマツの植林が進み結構人は入っているようで、さほど歩き難くはなかった。北西から支稜を合わせ、小ピークを越えると蟻ヶ峰に着いた。南西に展望が開け、八ヶ岳や天狗山・男山、奥秩父西部の山々が目前に広がる。静かで穏やかな山頂であった。

駐車所先の登山口 標高1359m

御巣鷹の尾根登山道案内図

昇魂之碑
 そんなわけで紅葉も良さそうな時期を選んで歩いてみることにした。事故日の8.12ではなくこの時期に慰霊登山に来る遺族も多いと聞く。御巣鷹の尾根登山口に駐車し昇魂之碑まで800m、標高差180mの登山道を歩き始める。道は大変良く整備されていて手すり、丸太階段の設置など大変歩きやすい。「すげの沢のささやき」を過ぎ道標に従って歩いていくと昇魂之碑前の広場に出た。

御巣鷹の尾根を上っていくと登山口道標 

アセビの藪から始まる

テープを頼りにルートを取る
 碑の前で手を合わせ、空の安全を祈っての鐘を鳴らしてから登り出す。墓碑の間を抜けて藪の踏み跡を辿ると、立木に高天原山・大蛇倉山の道標が打ち付けられてある。目立たない方向にあるので見落としやすいかもしれない。とにかく尾根を行くことを心がけよう。さらにアセビの藪を過ぎると雑木の原生林へと入る。何となく道はあるがルートを決定するのは難しい。しかし立木には数種類のテープが混在し無数に付けられているのでルートを外すことはないだろう。しかし急登である。立木に掴まって登ったり、落葉に足を取られたりと結構大変だ。

急な上りが続く 

わずかに紅葉が良い

やっとの思いで稜線に出ると道標が待つ
 概して展望はないが時折南側に県境稜線が見える。テープに先導され急登の登りを続けると「60年日航機遭難地慰霊登山道」と書かれた道標の立つ稜線に出た。右方面は大蛇倉山・三川へ、左方面は高天原山・三国山へと道標が示している。あとは県境稜線を50分程進めばいいわけだ。登ってきた尾根よりもはっきりとした踏み跡はあるしテープも変わらず付いている。

向こう側が蟻ヶ峰(1978m) 

岩場を降りる(巻道もある)

山頂からの金峰山(中央)
 すぐにロープの着いた岩場となる。簡単な稜線歩きではないようだ。稜線下の長野県側のカラマツ林の中に踏み跡が続いている。カラマツの林の中を歩いていく足下にはシダの類がびっしりだ。紅葉はまだなのかそれとも終わりなのかな?はっきりとしない。台風で飛んでしまったのだろうか?しかしカラマツの黄葉はこれから色を深めていくようだ。間もなくして急登一踏ん張りすると蟻ヶ峰の頂上だった。

南アルプス(左端が北岳) 

南八ヶ岳が近い

両神山も見える
 山頂にはMHCの山名板1枚が立木に付けられ、草場の山頂には三角点が埋め込まれていた。南には奥秩父西部の山並みから始まり、北岳を始めとする南アルプス、さらに八ヶ岳を展望することが出来た。東には両神山。山頂の立木がなければ大きく展望が広がっていることだろう。山頂は縦走路の一部といった感じの頂である。

山頂での一枚

帰路の岩場から南相木ダム

一帯はカラマツ林となっている
 ブドウ峠から縦走してきた横浜からの単独行者と山頂を共にした。道はあるのかとの問いに、「あると言えばあるし、それは人の評価だから。」とのこと。要するに藪なのだ。藪のエキスパートからすれば道はあるが、しんぷるライフにすれば道はないとなるのだろうな。帰路にはシャクナゲが切り払われていた岩に上がってみた。そこからは頂上での展望が立木に遮られることなく広がっていた。ロープの岩場では赤テープに釣られて道をはずしてしまった。南相木村へと下る道が続いているのだろう。ここ蟻ヶ峰は高天原山の他に神立山、ショナミの頭と4つの山名を持つ頂である。
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