小出俣山
おいずまたやま
1749m
みなかみ町
登山日 2009年4月7日(晴れ) しんぷる、tomo、赤城良常
行 程 川古温泉(5:50)…千曲平(6:40)…オゼノ尾根取り付き(6:45)…黒檜自生林(8:25)…小出俣山頂上(9:35-10:00)…阿能川岳(11:45-12:35)…三岩山(13:05)…鉄塔(14:55)…仏岩トンネル西側(15:53)…仏岩P(16:07)
 久しぶりの早起きだ。頭が一瞬クラクラとした。今日は息子と二人で阿能川岳へ登って以来、念願だった山へtomoさん赤城良常さんと同行である。待ち合わせの時間5時ピッタリにtomoさんの携帯電話が鳴った。赤城さんからだ。「几帳面な性格?」と尋ねると「そう」との答え。遅れること2分余りで合流。初対面なので簡単に挨拶を交わす。群馬県で一番アクティブな山歩きホームページのオーナーである。仏岩パーキングに赤城さんの車を止めて、私の車で川古温泉へと車を進める。

象徴的な大岩

小出俣山かな

千曲平橋へと向かう
 小出俣山取り付きへと続く林道には全く雪がなく順調な立ち上がりとなった。ゲート脇から歩きだし林道工事のためえぐり取られた大岩は十二社ノ峰へと続く尾根端になる。この尾根を辿って小出俣山へと歩いていくのも楽しいかもしれない。小出俣沢とほぼ平行して林道は続く。調整池を過ぎたあたりから残雪が現れ始めた。登山者の足跡が残されている。雪の締まりはあまりいいとは言えず、ズボズボ沈み込むことも多くやや歩きにくい。やがて千曲平(せんげんだいら)と呼ばれる開けた場所に出る。大きな桂の前を林道に沿って右折して、小さな千曲平橋を渡れば間もなくオゼノ尾根の取り付き点だ。枝に赤布と金色の細テープが結ばれている。道の反対側には31。林道から入り込むと雪はなく大地は湿った落葉に覆われている。踏み跡がはっきりとしないが、左方面を探せば目印がある。杉林を抜けいよいよ本格的な上りに入る。両人の健脚ぶりは広く知るところなので、「ひとつ、お手柔らかに」と先制のジャブを放っておいた(笑)。

千曲平橋

オゼノ尾根への取り付き点

取り付き点の反対側
 tomoさんを先頭に歩きだす。急登の尾根にも雪は残らずアキレス腱が伸びる。すぐに息が上がってしまった。最初に無理をするとバテるので、自分のペースを崩さず歩くことにした。時間がなければこの尾根をピストン、余裕があれば阿能川岳を巡ることになっている。余程のことがない限り順調に足を延ばせるだろう。

踏み跡が多い尾根

山頂の阿能川岳

ブナの尾根を行く
 ほどなく尾根に雪が出始めた。両人は10本アイゼンを装着。私はしばらく付けないまま歩くことにして先行する。尾根はブナなどの落葉樹が多く、春の日差しを浴びて明るく気持ちがいい。ここで日焼け止めを塗る。先日の獅子ヶ鼻山の帰路で懲りたからだ。残雪にはいくつもの踏み跡が付いていて迷うことはない。振り返ればブナの木に赤ペンキが付けられていて安心だ。気温が高く汗ばんでくる。半袖でもいいような感じで一枚脱いだ。やや傾斜が増してきたところで6本アイゼンを装着だ。西には十二社ノ峰から続く尾根、東には帰路に歩く予定の阿能川岳への尾根が緩やかに横たわっている。

黒檜の自生林(1360m付近)

核心部を東側から巻く(1410m)

核心部を過ぎたところ
 やがて黒檜自生林の陰で一息つく(標高1360m付近)。この先に核心部があるそうだ。標高差は残り400m程。300m1時間とすれば残り80分。残雪を考えても10時には山頂に立てるだろう。わずかの休憩で山頂を目指す。核心部は岩場を東から巻いていく。西からもいけるとのことだがどうだろうか?岩場の東斜面は切れ落ちていて落ちれば真っ逆さまだろう。慎重に足を運べばさほど怖い場所ではないが、雪の具合で大きく変化するのでいつも同じ状態とはいかないだろう。核心部を過ぎると鞍部のような場所だ。

三尾根岳(左)と小出俣山

ブナも小さい

振り返れば吾妻耶山が霞む
 あとは淡々と高度を稼いでいくだけだ。森林限界が近いのかブナの木も小さい。森林帯から抜け北西に方向を変えれば山頂は近い。気温が高く遠望が利かないのが残念だが谷川連峰の眺めだけでも満足だ。

阿能川岳と三岩山

森林限界は近い

俎ー山稜と阿能川岳への稜線(手前)
 阿能川岳への稜線がくっきりと見える。稜線上には部分的に全層雪崩の跡が見て取れる。残雪はほどほどの締まりがあり歩きやすい。体が慣れたのか、それとも山頂が近づき心がはやるのか体は軽いぞ。ダケカンバの疎林を楽しみながら高度を稼いでいく。

三尾根岳(右)からの十二社ノ峰への尾根

ダケカンバと天神尾根

最後の急登を行く

阿能川岳へと続く稜線

阿能川岳から万太郎・仙ノ倉方面

山頂で記念の一枚(背景は仙ノ倉山)
 山頂直前で先を譲ってもらって一番に小出俣山の頂に立った。山頂標識は雪の下に埋もれているらしい。大展望に見入っていると気温が低いことに気づく。ここで赤城さんに名刺を頂いた。tomoさんも作ってあるという。私も山の名刺を作っておこう。谷川主稜線の眺めは飽きることがないが、ずっとここにいるわけにもいくまい。ここからは展望の稜線歩きが楽しめそうだ。時間的にも余裕があるし阿能川岳を目指して歩き出す。

小出俣山頂からの展望

小出俣山頂東部から阿能川岳への稜線

軽快に下りてくる赤城さん

稜線の向こうには俎ー山稜
 山頂の冷えた空気ですっかりと体が冷えてしまった。歩き出せば暖まるだろうと思っていたが、山頂を下り始めた辺りから風が冷たい。どうやら東面は風の通り道となっているようだ。一枚上着を着込む。山頂から続いていたトレースは本谷方面へと続いている。俎ー山稜から谷川岳へと歩いたのだろうか。残雪期に良く歩かれているようではある。残雪はほどよく締まっていて歩きやすい。

稜線を先行する二人

立ち止まり展望を楽しむ

小出俣山を振り返る
 トレースから離れて阿能川岳への稜線へと下る。分岐地点は稜線唯一の核心部だ。コース北側の灌木帯を下るか迷ったが、急斜面をキックステップで慎重に下った。こうなると6本では不安を覚えた。まあこんなところは近づかないことだろう。あとは雪庇に気を付けるだけで快適な歩きが期待できそうだ。小さなアップダウンを繰り返し徐々に高度を下げていく。振り返る度に小出俣山が高くなっていく。そして俎ー山稜が大きくなってくる。

俎ー山稜が大きくなってくる

視線の先にはどんな展望が広がるのか

阿能川岳へ最後の上り
 小出俣山から阿能川岳までわずか1時間30分の稜線は谷川岳主稜線の展望稜線となっている。刻々として変化していく大展望を楽しみながら快適な残雪歩きを満喫だ。薄氷に覆われた残雪表面は日光を反射し、我々がステップを切る度にザーザーと音を発しながら小さな雪塊を滑らせていく。風紋も目を楽しませてくれる。トレースのない雪の上を前になったり後になったりのんびりと歩いていく。至福の時間だ。やがて1470m鞍部から阿能川岳に向かっての上りとなる。さて上りになったからピッチを上げるかと、tomoさん。この人には付いていけません(笑)。

歩いてきた稜線を振り返る

ブナの林を南寄りに抜ける

この雪庇の先で道を合わせる
 振り返り振り返り高度を稼ぐ。ブナの林を抜け雪庇の道を少し行けば赤谷越(仏岩峠)からの道を合わせる。分岐目印の赤布やテープがあるが少しわかりにくいかも。そこから数分で阿能川岳に立つ。以前あった2枚の山名板は見あたらなかった。武尊山やその北に至仏山さらに平ヶ岳方面が白く見える。霞んではいるが赤城山なども遠望出来た。時間もちょうど良いので山頂での昼食となった。微風はあるが心地よい。

阿能川岳へから武尊山

小出俣山と万太郎山

南には三岩山と吾妻耶山さらに子持山
 中学生だった息子と一緒にこの場所に立ったことが思い出された。じっとしていると風が冷たく雪庇の陰で昼食をとったものだ。山頂からの展望は近くの谷川岳稜線はガスに覆われ展望には恵まれなかった。大学生になった息子と今回の逆のコースで歩こうと3月22日、4月4日と約束を入れておいたが天候に恵まれず山行きは叶わなかった。そして今日この場所にいる。数日前に阿能川岳の記憶を尋ねたが良く覚えていないとの答えが返ってきた。ちょっぴり残念な気がしたが仕方のないことだ。

阿能川岳を後にする

阿能川岳も見納め

三岩山を過ぎた岩場
 十分な時間を過ごしたところで阿能川岳を後にしよう。名残惜しい山頂ではあるがずっと居られる場所でもない。三岩までは展望を楽しみながらの雪上歩きが続くが、三岩の難所がある。1回経験しているので想像は付くが3月に歩いているtomoさんの話を聞きながら進もう。三岩山を過ぎ今日唯一の登山者とすれ違うがあまり会話はなかった。岩場にはアイゼンが必要とのことだ。踏み跡があるのでコース取りは心配ない。痩せた尾根も雪庇に気を付けて慎重に進めば問題はない。

三岩の難所だ

難所を抜けブナの林をいく

20号鉄塔
 下りは3時間足らずで下りられると踏んでいたのだが意外と時間を費やした。やはり雪の状態で大きく変わるということなのだろう。前回は往復アイゼンも使わず楽々と下りてきた記憶があっただけに意外と大変だったのだと認識を新たにした。20号鉄塔でアイゼンを外した。ここから雪が消え、踏み跡もなくなったせいもあり尾根を間違えてしまった。油断禁物です。藪を下り降り立ったところが仏岩トンネルの西側で胸をなで下ろした。久しぶりの長丁場で疲れたが、少し自信ができた山行であった。お二人には感謝です。これからはお花見山行だ。
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