茂倉岳
しげくらだけ
1978m
みなかみ町
トマの耳から茂倉岳と一ノ倉岳
登山日 2007年5月24日(晴れ) しんぷる
行 程 土合駅(5:43)…西黒尾根登山口(6:12)…ラクダの背(8:18)…ガレ沢の頭(8:29)…ザンゲ岩(9:26)…トマの耳(9:52-10:03)…オキの耳(10:14)…一ノ倉岳(11:02)…茂倉岳(11:20-12:00)…避難小屋(12:10)…矢場ノ頭(12:58-13:10)…登山口(14:23)…土樽駅(14:58)
 谷川山系は少なからず歩いているつもりだが西黒尾根はまだ一度しか歩いていない。谷川岳へはロープウェイ利用の天神尾根が楽であり、どうしてもそちらに足が向いてしまう。西黒尾根の短絡コース(マチガ沢を見ながら登る)である厳剛新道も過去2回歩いているところを見ると、いかに西黒尾根を登りたくないかがわかろうというものだ。しかし何といってもこのルートは伝統ある谷川岳への表玄関であり軽視は出来ない。1回しか歩いたことがないのもシャクなので再び歩いてみることにした。土合駅からの歩きは丁度いい足慣らしになる。指導センターを過ぎるとすぐに西黒尾根登山口となる。1度経験しているだけにあまり気合いも入らないが長丁場なのでなるべくゆっくり歩くことを意識する。記憶の通りの急登である。展望のない樹林帯だがブナをはじめとする新緑がまぶしいばかりだ。やがてJRの鉄塔が現れる。同時に展望も開け白毛門が立木の間に姿を現わすと気持ちもホッとしてくる。歩き始めて1時間弱経ったのでブナの大木の根本で一息ついた。
 傾斜が緩んでくると「土合1時間 谷川岳山頂3時間」の道標が立ち、それを過ぎると一旦小さく下る。しばらくは緩やかな傾斜が続き、足元にはイワカガミばかりだ。ようやく花の季節が始まったというところだろうか。タムシバ、シャクナゲ、オオカメノキなどがわずかに花を付けている。再び急登となり露岩が目立つ様になると「ラクダの背」への登りが始まる。岩場に取り付くとナエバキスミレ、カタクリ、イワナシ、イワウチワ、コヨウラクツツジが姿を見せる。同時に展望が大きく開け、朝日を浴びながら雪渓を残す谷川岳東面岩壁の景観がよい。ロープウェイも動き出したようだ。
 東方に目をやれば平ヶ岳、会津駒ヶ岳、燧ヶ岳、武尊山、日光白根山、皇海山、赤城山などが目に入ってくる。あいにく遠望はスッキリしないが谷川岳、白毛門方面はくっきりと見えているので良しとしよう。標柱の立つラクダの背まではいくつかの岩峰を越えていかなければならない。足が上がらず最初の岩峰上で腰を下ろし一本のバナナを口にした。いくつかの鎖場を過ぎてラクダの背に立ち展望を楽しみながら再び休息だ。前方を見やれば岩の壁が覆い被さってくるようだ。過去にもこの急登に手こずっている。ガレ沢の頭、つまり厳剛新道の分岐を右に分け急登に取り付く。吹く風はすがすがしく心地よい。萎えていた元気が戻るような気がした。しかし現実には段々と足が上がらなくなり立ち止まることが多くなる。度々振り返っては歩いて来た道を確認する。さあ、もう一がんばりだ。

ラクダの背と西黒尾根

肩ノ小屋が見えてくる

トマの耳から西黒尾根を見下ろす
 黄色や赤のペンキを頼りに徐々に高度を稼いでいく。花は紫色したスミレが咲いているのみで足を休める理由にならない。氷河の跡周辺には残雪が見られた。その上のザンゲ岩の標柱は倒れていた。今日はその上に立とうと思っていたが気持ちが乗らず素通りしてしまった。いつになったらザンゲ岩の上に立てるのだろうか。間もなく岩稜帯も終わり肩ノ小屋下の雪田に到着だ。ロープに沿って雪田を歩くと道標が付けられたケルンが見えてきた。進路を変えトマの耳にむかう。肩ノ小屋の窓という窓にはシュラフが乾されていた。昨夜多くのハイカーが宿泊したのだろう。そして第一の目的地トマの耳に立った。誰もいない山頂からは上越の山々が一望である。やはり谷川岳はいい山だなあ。

トマの耳

一の倉岳から茂倉岳

茂倉岳山頂
 しかし時間が気になる。土樽駅の上り線は15:22であり茂倉岳山頂から土樽駅までのコースタイムは3時間弱。山頂を12時に下るとしてものんびりと1時間は過ごしていたい。ということは11時には茂倉岳の山頂に立たねばならない。残り1時間でオキの耳、一ノ倉岳を越えて行かなければならない。そこまでのコースタイムは1時間25分。どう考えても無理だ。しかし茂倉岳からの下りで時間短縮が図れるかもしれない。30分くらいは何とか短縮できるかと思っていた。
 トマの耳からノゾキあたりまでは険しい岩稜帯の歩きだ。なかなか時間が稼げない。振り返ればオキの耳の姿もまた良いものだ。主稜線を眺めながら先を急ぐと「ノゾキ」に出た。一応へっぴり腰ながら一ノ倉沢を見下ろしておく。ノゾキを過ぎると一ノ倉岳への急登が始まる。前回蓬峠へ降りたときは紅葉がなかなか良かったことが思い出された。ヨタヨタと低木帯を抜けると笹刈りされた山頂だ。小さな避難小屋の近くの残雪の中に道標が立っていた。一ノ倉まで来ると朝日岳がその全容を現わす。笠ヶ岳や白毛門は朝日岳山塊の小ピークにさえ思えてくるほどの大きさを感じる山である。心なしか巻機山が近い。越後三山中ノ岳・越後駒ヶ岳が高く聳え、その南方には息子と歩いた大水上山や丹後山が見えているはずだがそのピークはわからない。

茂倉避難小屋

茂倉新道と矢場ノ頭

矢場ノ頭から茂倉岳を振り返る
 一ノ倉岳から茂倉岳への稜線は雪田で覆われていた。ザクザクと足音を立てて快適に鞍部へ降りていく。上りに入る頃には登山道が姿を現わしわずかの登りで待望の茂倉岳頂上に着いた。時に11:20。そんなにゆっくりとしている時間はない。下りは12時と決めて湯を沸かしてのラーメンはなしにした。ザックから冷えた「贅沢日和」を取り出し一口飲み込むと一気に酔いが回った気がした。風がやや冷たく太陽を背に向け上越の山並みを楽しんだ。娘と登った巻機山を眺めながらその時のことを思い出した。きっと忘れることのない記憶だ。静かな山頂で過ごす時間は至福の時である。

純白のタムシバと残雪の巻機山

シャクナゲと茂倉岳

樹林帯の新緑
 山頂からは笹刈りの道を下っていく。なかなか良く整備された道である。すぐに茂倉避難小屋に着く。小屋は半分ほど雪に覆われていた。中を覗いてみたがなかなか立派できれいだ。トイレは別棟となっていて快適に過ごせそうだ。高度を下げるにつれ段々と暑さを感じるようになった。まるで真夏のようだ。足元にはショウジョウバカマ、脇にはシャクナゲがまばらに赤い花を見せている。先ずは矢場ノ頭が目的地となる。道は整備され歩き易いがなかなか到着できない。南方には谷川連峰主稜線が見事だ。谷川岳からオジカ沢ノ頭へと続く稜線はまるで穂高連峰吊り尾根のようだ。なんとか矢場ノ頭に着くが時間超過だ。20分ほどの余裕を持って歩き出して良かったと思った。矢場ノ頭からは茂倉岳が大きく聳え見事の一言だ。肩の小屋もはっきりと見える。南にはトマの耳から万太郎山までの稜線がくっきりだ。
 矢場ノ頭から下り出すと上越の山は巻機山が見えるだけになった。そしてタムシバの白い花が目立ち始めた。登山道脇に純白の花が見事に咲き誇っている。これほど数の多い道を歩いた事はない。高度を下げるにつれシャクナゲもいい花を咲かせてきた。思わず立ち止まってカメラを向ける時間が多くなった。やがて樹林帯にはいると登山道は木の根が露出して歩きにくくなる。長く辛い下りに感じた。足はヨレヨレで下りにもかかわらず休憩をとらないと歩き続けることが出来なかった。そして高速道路を通る車の音が間近に聞こえるようになると、さしもの長い登山道も終わり道標の立つ登山口に降り立った。電車時間まで1時間ある。車道を歩き15時に土樽駅に着いた。コースタイムを尊重して良かったと思った。
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