燕岳〜常念岳
つばくろだけ〜じょうねんだけ
燕岳・大天井岳・常念岳
2763m・2922m・2857m
北アルプス
雲海に浮かぶ裏銀座の稜線
登山日 2006年8月19〜21日(晴れ・曇り) しんぷるライフ
行 程 第1日−−−
 中房温泉(6:20)…第一ベンチ(7:00-7:05)…第二ベンチ(7:30-7:40)…第三ベンチ(8:10)…富士見ベ ンチ(8:40)…合戦小屋(9:20-9:50)…合戦沢の頭(10:04)…燕山荘(10:50)…燕岳往復(1時間)
第2日−−−
 燕山荘(5:50)…大下りの頭(7:00)…切通分岐点(8:33)…大天荘(9:00-9:35)…東大天井岳(10:15)…常念小屋(12:00)
第3日−−−
 常念荘(4:30)…常念岳(5:30-5:50)…常念小屋(6:35-7:53)…烏帽子沢(9:20)…山の神(10:08)…ヒエ平(10:08)…常念いこいの広場(11:40)

中房温泉
 車中で目を覚ますと4:50。すっかり寝過ごしてしまった。中房温泉行きのバスは5:15発。大あわてで支度を済ませて「しゃくなげ荘」前のバス停まで歩く。同じように中房温泉を目指すハイカーが今を遅しとバスを待っていた。朝食をとりながら待つこと数分でバスが到着したが、予想に反して小型のマイクロバスで全員が乗れず、係員が慌てて手配すること10分で次のバスが到着。こちらは中型バスなので余裕があった。どうも順序が逆のようだ。
 およそ45分で登山口の中房温泉に到着。燕岳を目指すハイカーの数は多い。さすがに数々の歴史を持つ北アルプスの玄関口の一つである。中房温泉の建物は立て替えられたのか新しい印象を持った。中房温泉の標高は1460mであり、燕岳の標高を考えれば約1200mの標高差を登ることとなる。しかもこのルートは北アルプス三大急登となっているようなので、はやる気持ちを引き締めて歩き出した。しかし他2つの急登はどこなのか分からない私たちであった。

第一ベンチ
 群馬の静かな山歩きを楽しんでいる身としては、北アルプスのハイカーの数にはいつも圧倒される。しかし登山道は思っていたほどの急登ではないようだ。列を作るようなかんじで登っていく。急登が続くということもあって一歩一歩踏みしめるようにゆっくりと歩いていく。追いつかれるとさっさと道を譲りマイペースを保つ。良く整備されているとは思うが必ずしも歩きやすい道ではない。梯子あり段差がきついところ多しである。天気は上々、しかし樹林帯の歩きで直射を浴びることもなく歩けるので楽なはずだが、湿度と気温の高さで汗が噴き出してくる。40分足らずで第一ベンチに到着。ここはこの合戦尾根ルートの唯一の水場となっているのだが、いかんせん登山口から近すぎる。軽く水分補給をして歩き出した。

合戦小屋
 登山道は同じような調子で続く。展望が得られることのないまま、荷揚げ用のケーブルをくぐると第二ベンチに着いた。標高1820m。腰を下ろして休憩だ。ここから傾斜は緩み歩き易い道となった。気持ちの安らげるのんびりとした歩きが出来る道だ。時折見える稜線を眺めながら高度を稼ぐと、再び30分ほどで第三ベンチ。急ぐ必要はないのだが、休む必要もないので先を急ぐ。ところが第三ベンチからは急登になる。いよいよ三大急登の本領発揮だなと思い心して歩くが、あっけなく富士見ベンチ。ガスが出始めてきて何も見えない。何はともかく一服入れる。
 富士見小屋から700mで合戦小屋に着いた。「こんにちわ、お疲れ様でした」と声を掛けられる。ここまで荷揚げ用のケーブルが来ている。先ずは合戦小屋名物のスイカを頬張る。一切れ800円だ。山歩きにはスイカは良いようだ。血液サラサラとのこと。水分補給には1切れ、名物を楽しむだけなら2人で1切れでいいだろう。ガスが静かに小屋周辺を覆い始めた。青空はすっかり隠れてしまっている。涼しくなって歩き易いがトーンダウンするのも事実。たっぷりと水分補給をして歩き出す。今まで取り立てて花があるわけではない。

快適な尾根を行く 
合戦小屋からの道は快適で楽しい歩きとなる。合戦沢の頭を過ぎると高山植物が見られるようになり、ウサギギク、ハクサンフウロ、タテヤマリンドウ、テガタチドリ等々が目を楽しませてくれた。いつの間にか山荘が近づくと直下のお花畑だ。すでにトリカブトが咲いている。もう秋なのだ。燕山荘前に着くと「こんにちわ」とスタッフが明るく迎えてくれる。稜線に立つとこれから登る燕岳、そして裏銀座の山並みが眼前に広がっていた。槍の穂先はガスの中。槍ヶ岳は穂先がなければつまらない山だと思ってしまった。(苦笑) 三大急登とあったが大したことはなく、ごく普通の登山道と思う。それとも整備が行き届いているせいでそう感じたのだろうか。30〜40分間隔で休憩ベンチが置かれ、ペース配分が容易なコースであるのかもしれない。

イルカ岩
燕山荘に宿泊の受付をして、身軽となって燕岳を目指す。山頂まで片道30分だ。花崗岩が風化した砂礫の道を行く。岩とハイマツが織りなすコントラストが見事だ。また岩の造形物がおもしろく、足元にはコマクサが最盛期は過ぎたようだが迎えてくれている。岩場を軽快に登り燕岳山頂へ立った。
  稜線を挟んで合戦尾根方面だけはガスの中だが、平坦な稜線を大天井岳方面に延ばしている表銀座パノラマコースはしっかりと見て取れた。谷を挟んで対峙する裏銀座コースの稜線を楽しみながら昼食とした。北燕岳への稜線のコマクサが見事だというが、ガスが稜線を越えて来始めたので戻ることにした。合戦尾根を抜きつ抜かれつしたハイカー達と何組もすれ違った。山荘に戻って冷えた生ビールで乾杯。北アルプスは観光地なのだ。定員は600人だそうだ。スタッフの接客態度もなかなかよい。
 夜半に目を覚まし窓から外を眺めるとはっきりと星が見えた。思わず外に出て天の川を楽しんだ。安曇野の街明かりも見えるし、今日は天気に期待が持てそうだ。

燕岳山頂下で

燕山荘
朝食前に外に出てご来光を仰ぐ。雲海に輝くそれは今日の行程の成功を約束しているようだった。食後に槍はどうかなと歩いていけば、穂先がしっかりと天を指していた。このパノラマを楽しむためにやって来たのだから…。準備を整えて常念岳までの縦走の始まりだ。
日の出

燕岳

槍ヶ岳

コマクサ

大天井岳へと続く稜線
上空に薄い雲はあるもののパノラマを楽しむには何ら問題はない。先ずは道標に従って大天井岳を目指す。花崗岩の砂礫の稜線歩きだ。白砂とハイマツの登山道にはコマクサやトウヤクリンドウが可憐な花を咲かせている。蛙岩の露岩帯に差し掛かり大岩の間を抜けて下る。多少のアップダウンはあるが快適に足は進む。眼下には上高地と梓川を見下ろす。

大下りの頭
 緩やかな登り返しで大下りの頭に到着。砂礫の急坂を下り、お花畑を抜け為右衛門吊からは2699峰への登り返しだ。稜線の東側に出れば花の種類が豊富でお花畑の様相を見せてくれる。ハクサンフウロ、ウメバチソウ、アキノキリンソウ等々。右に左にと移りながら登ると2699峰へ出る。ここで展望を楽しみながら一服入れた。目の前には大天井岳が大きく横たわっている。斜面に付いた登山道は大天荘へと続いている。

大天井岳
 切通岩の梯子を下りコルに降り立つ。コルからは岩礫帯の登りとなり大天井岳の山腹を右に回り込むと槍ヶ岳方面との分岐だ。見上げれば胸突き八丁とも思える急斜面が行く手を阻んでいるように感じた。東側からガスがかかってきて安曇野方面の展望はない。石がゴロゴロした山腹の登りらしい登りを行くと大天荘前の稜線に出た。再び槍・穂が目の前に姿を現した。裏銀座コースや燕岳はガスの中に姿を隠してしまっていた。
 小屋前にザックを置いて常念山脈最高峰の大天井岳山頂までピストンだ。山頂からの展望は特別変わったことはなく、稜線から見慣れた展望が広がっているだけだった。しかし山頂で雷鳥にご対面となった。人におびえることなく堂々としているものだと感心してしまった。
 目指す常念岳はガスの中にあり、時折切れ目から姿を見せる程度である。東大天井岳までまさにパノラマコースの稜線が続いていた。抜きつ抜かれつしてきたハイカー達は槍方面に足を向けたようだ。先行者のいない縦走路を歩き出した。白砂にはコマクサやトウヤクリンドウが多い。東大天井岳の道標に着いた。かつて稜線沿いに直進する道があったらしいが今は廃道となっている。道標から左に回り込むように道は付いている。斜面一帯がハイマツの海で登山道はハイマツを切り開いて続いている。途中廃道の看板がいくつかありコースが付け替えられたようだ。基本的に下りが続くため平坦な場所に来るとコルに下りたような錯覚にとらわれた。一匹の猿が登山道を歩いていくのが見えた。
ハイマツの原

常念岳登山道から常念小屋を見下ろす
 横通岳に近づくとハイマツはぐっと減ってガレた感じになってくる。正面に屹立しているはずの常念岳はずっとガスの中だ。横通岳は山頂を巻いていく残念なコースである。砂礫を行き大岩の道を越え、再び砂礫の道となると横通岳の南斜面を巻き南の肩に出る。いよいよ常念乗越への下りだ。すぐにハイマツの中にダケカンバやコメツガ、シラビソの低木が生い茂る樹林帯となった。展望のないまま一気に下ると人の声がしてきた。ここまですれ違ったハイカーは4組だけ。燕山荘付近の賑わいとは異なり、静かな稜線歩きを堪能することが出来た。見覚えのある景色が目の前に広がった。常念乗越である。一の沢から登ってきたばかりのハイカーに声を掛け、道の状況を尋ねた。少し遅れて奥様が到着。常念小屋では同室となった。この頃にはあたり一面白いガスに覆われ展望が利かなくなっていた。
 常念岳へ向かう朝は完全にガスの中だ。とても展望は期待できない状況となってしまった。前夜、一緒に飲んだ山仲間全11人でまだ薄暗い中を山頂に向けて登り始めた。今回が3回目の登頂となる。コースタイム通り1時間で山頂へ。晴れていれば360°の大展望が広がっているはずなのだがなあ。やはり残念だ。バラバラと全員が集合したところで記念写真をそれぞれのカメラに納めた。下山時には青年2人と一緒になった。間もなく常念小屋というところで雨に降られてしまった。小屋からの出発で青年達と一緒になり、タクシーを乗り合わせる約束をして一の沢を下っていく。待たせてはいけないので先行した。
常念岳頂上

一の沢登山道 
一の沢林道まで5.7Kmとある。直ぐに樹林帯に入り展望のない急な下りだ。林道の崩壊で補導所からさらに5qの道のりを歩かなければならない。第4ベンチから第1ベンチまで短い間隔で休憩できるようになってはいるが下りには必要ない。あっさりと青年達に抜かれてしまったが、30分あまりで水場に着いた。一の沢は花が多い。急な登りも多くの花に癒されるのではないだろうか。この沢にも夏道、冬道と有り雪渓を登るようになっているようだ。
 このコースの中間地点に当たる烏帽子沢で少し休憩。コースタイムも上々でタクシーを呼んだ時間には十分間に合いそうだ。

ヒエ平
 道も徐々に緩やかとなり登りのハイカー達とも数多くすれ違うようになった。再び雨に降られたが、急斜面でもなく傘を差して歩いた。やがて古ぼけた鳥居が現れるとそこに「山の神」だ。そこには先行したらしい多くのハイカーが休憩していた。一の沢まで500m。そして間もなく登山口に着いた。標高1260mで中房温泉より200m低いことになる。
 林道は舗装路でその固い地面に足が痛んだ。痛む足をかばいながら、所々崩壊した林道を下っていく。深い谷に林道を造るのはやはり無理があるのだろう。皇海山へ続く栗原川林道も然り。とは言っても便利であれば利用するのが人間だろうか。
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