万太郎山
まんたろうやま
1954m
みなかみ町
オジカ沢ノ頭から望む縦走路
登山日 2005年7月29〜30日(晴れ) しんぷる、HK
行 程 土合駅(10:50)…土合口駅(11:20)+++天神平駅(11:30-11:35)…天狗の留まり場(13:45)…天神ザンゲ岩(14:40)…肩の小屋(15:15-05:50)…オジカ沢ノ頭(6:40)…小障子ノ頭(7:20)…大障子ノ頭(7:55)…万太郎山(8:55-10:10)…林道(13:10)…土樽駅(14:10-15:22)===
土合駅(15:32)

肩の小屋下の雪渓
 谷川連峰主稜線縦走の機会がやってきた。天神平から歩き出し大障子避難小屋に一泊して平標山・松手山経由で土合駅まで戻るというものだ。しかし思いとは逆に、暑さと肩にずっしりと食い込むザックのせいか足が進まない。結局時間切れで肩の小屋泊まりということになってしまった。冬の豪雪のせいで肩ノ小屋の下にはいまだ雪渓が残っている。冷たくして飲み物を飲もうということになって、スーパーの袋に雪を詰めるだけ詰めて肩の小屋に向かった。
 寝具付き一泊で3300円だ。間もなく雨が降り出してきた。自炊は休憩室のテーブルの上でするようにとの管理人のお言葉。そこでは単独行者が一杯やっていた。レギュラー缶1本500円を買い求め労をねぎらう(笑い)。テーブルの上に雪を持ち込み水や焼酎を冷やしておく。
 横浜から新幹線で来たという彼は、前日平標山の家に一泊して、明日はやはり新幹線で越後湯沢から帰るという。なんとも優雅な山行きだ。山の家は素泊まり3000円とのことだ。山の話に花を咲かせていると、宮城から来たという年配の方が缶ビールを片手に仲間に加わってきた。夫婦で来たという。今夜この小屋に泊まるのは我々を含めて8人のようだ。なんとものびのびとした山小屋泊まりではないか。中には水洗トイレまで出来ていた。これで水さえあれば申し分なしだが。

オジカ沢の頭と川棚の頭
 夜半には雨は上がり、窓から月明かりが見えた。単独行者が夜明けとともにガサゴソと始めだした。それにつられて我々も起き出し朝食とした。さて今日はどうしようか?昨日の調子だと縦走は無理だろう。結局、万太郎山から吾策新道を土樽に下ることにして出発だ。一昨年、西黒尾根から歩いたコースと同じになる。違うのは天神平から登ってきたことと、一泊を費やしたということである。管理人に挨拶だけして縦走路を歩き出す。先ずはオジカ沢ノ頭だ。中ゴー尾根への分岐点まではハクサンフウロやオトギリソウなどが咲いていた。花はさすがに梅雨時期の最盛期は過ぎ、百花繚乱とはいかず足を止めて歩くほどではない。

オジカ沢の頭
 白毛門まで行きたいと言っていた宮城から来た夫婦はどうしたろうか。先行するHKの後ろ姿を離れて見ながらふっと思った。オジカ沢ノ頭が険しく聳えてきた。谷川岳から見ると優しそうな縦走路に見えるのだが、実際歩いてみると易しくはない。昨夜の雨のせいで登山道を濡れた笹が覆い、スパッツを付けた膝の上までズボンがびしょぬれである。笹が切れれば乾くだろうとあまり気にせずに歩いていく。最初のピークあたりでHKに追いついた。下りは普通だが上りに入ると苦しそうだ。いくつかのピークを過ぎオジカ沢ノ頭のトップに立った。以前ここで休憩したときに手袋を片方落としたことが思い出された。探してみたがやはりなかった。あるわけないか(苦笑)。まあ、とにかく一息つく。大障子ノ頭を過ぎるあたりまで、縦走路を振り返れる度にこのオジカ沢ノ頭が高く聳えて見えることになるのである。そして北側には一ノ倉岳と茂倉岳が、南には川棚ノ頭が美しい姿を見せていてくれる。

大障子の頭へ向かう
 大いに下って少し上り返せば小障子ノ頭だ。ここまで来ると大障子避難小屋が眼下に見える。谷川岳特有のカマボコ型ドームの小屋だ。オジカ避難小屋は戸が壊れて閉まらなくなっていた。水場へ15分との分岐を過ぎればここは立派な避難小屋だ。水場は水が豊富だったと横浜からの単独行者が言っていたが、手持ちの水は対丈夫だ。夕べはこの小屋に3人ほど宿泊していたはずだ。雨に濡れながらたどり着いたはずである。ここからは登山道脇の笹は刈られ快適に歩けるようになった。一体誰が手入れをしているのだろうか、ありがたいことである。一日曇りという前日の天気予報ははずれ、青空が覗いている。だんだんと気温も上がってきている。大障子ノ頭で一息入れながらやや霞んではいる展望を楽しむ。上越のマッターホルンとの異名をもつ大源太山がその名に恥じない姿を見せている。

万太郎山への登り
 一旦軽く下るといよいよ万太郎山への最後の登りとなる。少し歩くと単独行者が下りてくる姿が見える。すれ違いざまに声を掛けた。聞けば昨日はエビス避難小屋に泊まる予定だったのだが、雨漏りがひどいので雨の中を越路小屋まで歩いたこと。40分ほど前に3人連れとすれ違ったこと。こちらとしては大障子避難小屋から先は笹刈りがしていないこと位だったが簡単に情報交換をした。やがて登山道脇の笹が切れ、草原状になってくる。斜面にはニッコウキスゲの群生が姿を現した。先に目をやればコバイケイソウが白い花を天に向けている。真夏としては比較的穏やかな暑さの中(もっとも時間的にも速いせいもあるが…)、吾策新道分岐を過ぎて平坦な道をわずか進めば、2度目の万太郎山の頂だ。靴と靴下を脱ぎ、天日干ししながらHKを待った。歩く予定であった仙ノ倉方面はガスで半分ほど隠れている。またチャンスはあるだろう。

万太郎山頂上
 遅れてきたHとのんびりした時間を過ごした後、吾策新道を下ることにした。林道までおよそ標高差1200Mである。厳しい下りだったことが思い出された。痩せた岩場の尾根を気を遣いながら下りていく。途中で無性に腹が立ってきた。こんな下りはおそろしい、2度とごめんだ。標高を下げるにつれ暑さが襲ってきた。ガスも巻いてきて湿気がぐんと上がってきたようだ。舟窪のあたりで雷雨に掴まってしまった。雨具を着てやり過ごすべく待ってみたが、直ぐには収まりそうにもない。登山道は沢のように雨水が流れ出している。少しずつ気を付けて進むことにした。雷鳴は近くで聞こえている。なりふり構わず歩いていくと、周りが杉の植林帯に変わってきた。明らかに林道が近付いたことがわかった。
そして遂に沢の音が聞こえてきた。3時間の下りもようやく終わりを告げた。もう二度とこの吾策新道を歩くことはあるまい、歩きたくないと思った。いつの間にか雷鳴も収まり、雨も小降りとなっていた。沢や川の水は濁流となり魚野川へと注いでいく。取り留めのない話をしながら1時間かけて土樽駅まで歩いた。
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