八ヶ岳
硫黄岳・横岳・赤岳・権現岳・編笠山
2760m・2829m・2899m・2715m・2523m
長野県・山梨県
硫黄岳方面から望む横岳・赤岳・阿弥陀岳
登山日 2004年9月19〜20日(雨のち晴れ) しんぷる、HK、KY
行 程 【美濃戸06:30】…(2:20)…【08:50赤岳鉱泉】…(1:50)…【10:40赤岩の頭10:50】…(20)…【11:10硫黄岳山頂11:20】…(40)…【12:00硫黄岳山荘13:05】…(1:00)…【14:05横岳奥の院14:10】…(1:15)…【15:25地蔵の頭】…(05)…【15:30赤岳天望荘(宿泊)06:40】…(40)…【07:20赤岳山頂07:40】…(1:25)…【09:05キレット小屋09:20】…(1:50)…【11:10権現岳11:50】…(55)…【12:45青年小屋12:55】…(25)…【13:20編笠山13:45】…(55)…【14:40押手川14:50】…(1:25)…【16:15観音平】
 八ヶ岳横断道路は深い霧の中だった。キャンプ地である観音平に着いたのは午後11時近くになっていた。駐車場に設営し2日間の縦走が成功裏に終わるよう3人で乾杯だ。
 5時過ぎに起床、朝食を簡単に済ませて予約しておいたタクシーの到着を待つ。運転手の話を聞きながら美濃戸までの30分間を過ごす。普通は美濃戸口までの乗客が多く、美濃戸まで入る客を乗せるのは今回が2回目だという。美濃戸口からの道は悪く運転もゆっくりだ。歩いているハイカーも多いし、路肩駐車している車も多い。代金7610円を払い、いよいよ南八ヶ岳主稜線の縦走が始まる。

美濃戸山荘前
 美濃戸山荘前はハイカーで賑わっている。天気は曇りで展望は全く期待できない。雨が降らなければ良しと言った状態だ。先ずは赤岳鉱泉を目指し北沢を行く。道は林道のように広く、沢の水量は豊富だ。快適に進めば堰堤広場に到着、一息ついていこう。橋を2つ渡るとようやく登山道らしくなってくる。北沢を右に左に進めばとうとう雨が落ちてきた。本降りではないが服を濡らすには十分だ。赤岳鉱泉に着いた時にはガスもすっかり濃くなっていた。稜線上は風が強く展望も全くないということで行者小屋から戻り下山していくハイカーもいた。落胆の中、硫黄岳まで登ってみた様子でその先どうするか決めることにした。赤岳鉱泉から見えるという横岳西壁の大同心・小同心と呼ばれる巨大な岩峰は当然のことながら視界にはない。
 小屋の前から硫黄岳を目指す。ジョウゴ沢を過ぎると樹林帯の登りが始まる。赤岩の頭から伸びる尾根をジグザグと進む。やがてハイマツ帯を抜け展望が開けてくると赤土が露出した赤岩の頭に出た。やれやれ、やっと稜線に出た。ここからは北八ヶ岳の展望が開け風が気持ちいい筈なのだが全く関係なし(苦笑)。
それでも風はさほど強くなく一休みだ。赤土と白砂の対照が美しい。オーレン小屋からの道を合わせ硫黄岳へと進む。大きなケルンのある岩が敷き詰められた広大な山頂だ。そしてガスと風の山頂だ。雨は治まっている。もうここまで来たら進むしかない!というわけで、7つのケルンを道標に大タルミを行く。爆裂火口などは当然ながら見えるわけはない。緑色の細いロープ伝いに進むと硫黄岳山荘に着いた。

硫黄岳山頂

カニの横ばい
 露出していた手が少しかじかむ感じだ。横岳のクサリ場を通過するのに用意しなければならない軍手を忘れてしまった。この先不安だったが山荘の売店を覗くと1組100円で置いてあった。1時間の昼食時間を取り横岳に向かい歩き出す。駒草神社の前を抜け相変わらずのガスと風の中を行く。晴れていれば堪えられないほどの展望を味わうことが出来るのだろうなぁ。比較的細かいピークが連続する横岳は、その稜線を目視できないと寂しいものがある。
 クサリ場が現れた。カニの横ばいに違いない。クサリを頼りに稜線を右に左に進むと奥の院と呼ばれる横岳の主峰だ。すれ違ったパーティーにこの先のコースを尋ねると、まだまだ楽しめますよと意味深な返事。そうかぁ、まだまだクサリやハシゴが出てくる訳ね。うーん、でも横岳がこの縦走の核心部とのことだがよほどの強風に煽られない限りは問題なさそうだ。西側の切れ落ちた深い谷を覗き込むと吹き上げる風で呼吸が出来ない。三叉峰で杣添尾根を分け、石尊峰・鉾岳・日ノ岳と進むが標柱などがないためさっぱりわからない。二十三夜峰を過ぎハシゴを下りると地蔵の頭が見えてきた。横岳を無事に通過だ。
横岳奥の院

赤岳天望荘前
行者小屋からの地蔵尾根コースを合わせる地蔵の頭には地蔵仏が置かれていた。そして眼下には行者小屋や赤岳鉱泉が見えるようになっていた。前線が通過したのだろうか。そして前方には赤岳天望荘が、そしてその背後には赤岳がガスの切れ間から少しだけ姿を現した。え〜っ、あんなところを登るの。今日は止めときましょ。
そんなわけで赤岳天望荘に入り宿泊の受付をした。一泊二食で7、500円、弁当1、000円、個室4、000円/4人部屋。夕食・朝食ともバイキング形式だ。個室での飲食は禁止となっていた。まあ、とにかく持ち上げたビールで乾杯だ。お疲れ様でした。明日に期待を持って今夜はゆっくりと休もう。
 朝が来たようだ。夜中に時々目を覚ましその度に外を確認すると、市街地の灯りと星空が見えていたが天気はどうだろうか。カーテンを引き窓を開ける。ガーン、濃いガスと風だ。視界50mといったところだろうか。昨夜の天気予報で雨具はしまい込んでいたのに再び着なければならないようだ。失意の中で朝食をとる。外に様子を見に出てみると、ガスは濃いが風は思ったほど強くはない。食堂の天気予報も晴れのち曇りとなっている。ホッカホカの弁当をザックに入れて40分遅れで計画通りに歩くこととした。
賑わう赤岳山頂
 赤岳天望荘の脇を通っていよいよ赤岳に向かって歩き出す。見上げるような急登だ。こんなところを登っていくのか〜。八ヶ岳を象徴するような岩場の急登。途中からは落石を注意しながらの鎖場が続く。登る人と降りる人が譲り合いながらの通行だ。鎖を頼りに登っていくと山頂小屋の建つ北峰にでた。山頂標識の立つ南峰まではほんのわずかな距離だ。そして八ヶ岳の名を冠する赤岳山頂に立った。大展望は全くなし。見えるのはガスと足下から切れ落ちる岩壁のみだ。今回はコースの調査だと割り切るほかなさそうだ。記念写真だけを撮って権現岳に向かうとしよう。

岩峰を行く
 南峰から降りていくと「阿弥陀岳はこっちでいいんですかぁ。」と尋ねられた。調べてみると少し降りたところから分岐している。我々はキレット小屋を目指す。急峻な岩壁の下りが続く。気を許すことはできない。ガスが晴れて阿弥陀岳の中腹部までが見られるようになってきた。分岐で分かれたパーティーが鞍部に向かって降りていく姿が見える。あちらも急峻な下りだ。
 一時的にガスが晴れ阿弥陀岳が山頂まで見られることが多くなってきた。中岳から阿弥陀岳に続く登山道には多くのハイカーが見える。そして山頂がくっきりと晴れた。赤岳に負けないだけの山容だ。あの頂には是非とも立ちたいと思った。竜頭峰で真教寺尾根を左に分け、鎖や梯子に助けられながら一気に高度を下げる。振り返れば大小多くの岩峰が見事だ。慎重にガレ場を過ぎればキレット小屋は近い。
阿弥陀岳と中岳

キレットを下る
 キレット小屋は樹林の中に建っていたが既に閉鎖されていた。分岐をそのまま通り過ぎ、多少展望のある台地で一休みだ。権現岳方面はガスがかかり山容がわからない。編笠山は時折その姿を現してくれている。権現岳へは旭岳を越えていかなければならない。急峻な登りではあるが赤岳ほどではない。道は直接山頂へは通じていないが、踏跡がありしかもわずかな距離なので山頂だけは踏んでおいた。
一旦鞍部へ下った後、権現岳への登りに入る。山頂直下には長い源治バシゴがあり緊張を強いられるところだ。一歩一歩確かめるように数を数えながら上がるとガイドブックの通り61段あった。さらにクサリ場の岩稜をよじ登ると山頂の分岐に達した。直下には権現小屋が見える。ここで天望荘で作ってもらった弁当を口にした。噂通り鰻弁当だ。これはきっと中国産の鰻だよねぇなどと話しながら食べる。食後、太刀の立てられた権現岳のトップに立った。
61段の源治バシゴ

権現岳頂上だ
 権現小屋まで下り、ギボシの急な岩稜の山腹を注意深く下りればノロシ場だ。ここからはシラビソやダケカンバなどの混ざる樹林帯の下りになる。キャンプ地を従えた青年小屋まで着くと、日差しが強いせいか暑く感じ、下界に降りてきてしまったような気がした。権現岳方面を振り返れば山頂からギボシへの稜線が美しい。ずいぶんと降りてしまったなあ。
残すは編笠山の一座のみだ。ギボシあたりからは緩斜面の登りに見えた編笠山も、登り出しは赤ペンキに従い巨大な火山岩をまたぐように歩いていく。シラビソなどの灌木帯に入り急登を一踏ん張りで岩が敷き詰められた山頂に着いた。権現岳が遠い。山頂を吹く風が気持ちよい。あとは観音平まで降りるだけだ。
編笠山からの権現岳

観音平まで原生林を行く
原生林の急斜面を下る。途中からは赤ペンキやテープを頼りに樹林の間を縫って進む。やがて傾斜がゆるむとちょっとした広場にでる。押手川だ。ここで青年小屋からの道を合わせる。ベンチのある雲海展望台で一休み。ここから富士見方面に下り、展望台の分岐から遊歩道に近い道を観音平までゆっくりと降りていく。そこから見上げる編笠山はやけに高くどっしりと聳えていた。
 延命の湯で二日間の汗を流し帰路についた。縦走路の高山植物を見て、花の咲き乱れる時期には必ず訪れようと心に誓った。
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