苗場山
なえばさん
2145m
新潟県・長野県
谷川岳から望む
登山日 2004年8月28〜29日(晴れ) しんぷるライフ,娘,息子
行 程 1日目:祓川登山口(10:00)…下の芝(11:50-12:10)…中の芝(13:00)…小松原コース分岐(13:25)…神楽ヶ峰(13:45)…雷清水14:05)…鞍部(14:15)…山頂(15:00)
2日目:遊仙閣(7:00)…湿原散策(7:05-8:05)…鞍部(8:55)…神楽ヶ峰(9:30)…中の芝(10:10-10:50)…下の芝(11:20)…和田小屋(12:05)…登山口12:25)
 台風16号の影響で関東地方は全般的に雨模様だが新潟県には晴れマークが付いていた。よし、それでは山小屋泊まりで苗場山に登ってくることにしよう。前夜に山頂小屋遊仙閣に電話するとOKとの返事。家族4人分の予約を入れて、和田小屋から登る旨を伝える。苗場山の登山時期としては梅雨明けの花の時期と、高層湿原が草黄葉に染まる9月後半からがいいようだ。逆に今の時期ならば混まなくて良いかもしれない。

ゲレンデを抜け登山道に入る
 久しぶりに三国トンネルを抜け苗場スキー場の辺りまで来ると予報通り青空だ。スキーシーズンの賑やかさと打って変わって国道沿いはひっそりとしている印象を受けた。三俣まで来ると苗場山登山道の道標があり苗場山林道へと入っていく。町営駐車場から先は和田小屋宿泊者以外の進入を禁止する旨が書かれている。ゲートは開放されているが初めてでもありそれに従うこととしよう。ハンゴンソウが咲く登山口には祓川コースの案内板と立派な標柱が立てられていた。
 和田小屋からはゲレンデになっている草原を抜けて登山道に入る。ブナの原生林からやがてオオシラビソなどの針葉樹林帯に変わっていく道だ。登山道は予想に反して岩の多い道で大変歩きにくい。しかもぬかるんでいる。この苗場山は火山活動により形成された山と知り、岩石の多さに納得する。時々、木道や丸太階段などが敷設されてはいるが膝に応える道である。足下にはゴゼンタチバナの赤い実が目立つ。オヤマリンドウが秋の始まりを告げるように咲き誇っている。

下の芝
 前日に山頂に泊まり下山してくるハイカーに度々すれ違う。早いものだなあ。もう少し頂上湿原を楽しんでくればいいのに…。こまめに休憩を入れながらのんびり歩いていく。5時間かけて午後3時に山頂に着けばいいと考えていた。娘は初めての山小屋泊まりで、息子は避難小屋に一泊の経験があるだけだ。夕食はカレーライスとのことなので伝えておく。あれこれと山小屋について想像しながら歩いていたに違いない。家族としては初めての一泊山行である。

カッサ湖を望む
 「下の芝」のわずか手前で昼食にした。日差しはあるが周辺の山にはガスが掛かり展望はないに等しい。下の芝は草地になっていて、ちょっとした休憩場所が確保してある。イワショウブも盛りのようだ。ここでお昼にすれば良かったねと話ながら次の目的地である「中の芝」を目指す。相変わらず岩の多い道で歩きにくい。中の芝に来てようやく樹林帯を抜け展望が開けてきた。しかしどういう訳か風とガスが出てきて展望を妨げる。岩石の道もどうやら終わりを告げ「上の芝」までは直ぐだ。顕彰碑を過ぎ小松原コースを右に分けると稜線に出る。

霧ノ塔方面
 吹き上げてくる風とガスの中の稜線を歩くと「神楽ヶ峰」だ。倒れた標柱がなければ通り過ぎてしまいそうだ。目の前にあるはずの苗場山はガスの中。梯子のある岩場を過ぎ、「富士見坂」と呼ばれるえぐれた道を下っていくとガスが鞍部を流れていくのがわかる。一瞬の切れ間に苗場山が姿を現した。登山道も道行くハイカーの姿もはっきりと見えるぞ。しかも最後は壁のような急登ではないか!頂上台地までの道のりは長いなあ。鞍部への途中に「雷清水」がある。ここで一服しながら最後の急登を眺めるのだ。脇には「遊仙閣行き」と書かれたコンテナにペットボトルが置かれていた。

鞍部から続く雲尾坂
 鞍部に下りるとお花畑だが、さすがに時期は過ぎ花を咲かせているものは少ない。ヤマハハコ、コゴメグサ、ヤマトリカブトやハクサンフウロなどだ。今まで歩いてきた登山道脇の高山植物から想像しても、この苗場山は相当植生豊かな山だといえる。この花畑が最盛期の頃はそれは見事なものだろう。鞍部に吹く風は強い。先を急ごう。山頂へ続く「雲尾坂」の急登を踏ん張って歩く。立木の手伝いも必要なくらいだ。振り返れば神楽ヶ峰は近い。そしてようやく山頂の一角にでた。そこはに無数の池塘を散りばめ、黄金色に色づき始めた天上の湿原が広がっていた。

山頂へと続く木道
 この頂上台地からは巻機山、谷川連峰から白砂山、鳥甲山、岩菅山、横手山など、さらには佐渡島や能登半島まで望まれるという。残念だが今望めるのは目の前に広がる高層湿原だけである。敷設された木道を行くと2つの山小屋が見えてきた。ちょうど予定していた時間に到着だ。小屋の裏手にひっそりとしかし立派な山頂標識が立っていた。

山頂標柱
 小屋の主は土樽から万太郎山へ直登する「吾策新道」を開いた高波吾策氏の子息で、同宿者とのささやかな宴が終わった後、万太郎山の紹介ビデオ(ちゃっかり主本人がモデル)と苗場山のビデオを控えめに見せてくれた。当然この山小屋に泊まらなければ見ることのできないものだ。夕食はカレー、朝食はハム、焼き海苔、キャベツの千切り、ヒジキの煮付け、漬け物、みそ汁、ともにおかわり自由だ。洗面所には何処かで見たペットボトルが置かれていた。料金は6800円也。翌朝は小屋の前にある鐘を鳴らして見送ってくれた。

広大な高層湿原
 このまま下山するのも何なので木道に沿って小赤沢方面を散策することにした。小屋が山頂となっているので徐々に高度を下げていくことになる。龍ヶ峰への分岐まで来ると鳥甲山が間近に見えた。数年前栃川高原にキャンプし、朝日に映える鳥甲山を背景に家族で撮った写真が目に浮かぶようだ。遠くには妙高・火打山、その脇にはうっすらと北アルプスが姿を現していた。台地から確認できた山はそのくらいだ。谷川方面がガスで見えないのが痛い。もう少し散策したかったが戻ることにした。

池塘と鳥甲山
 山小屋の前を通り過ぎて台地の縁まで来ると、前日は見えなかったカッサ湖もはっきり見える。中の芝で大休止しゆっくりと下っていけば、雲尾坂ですれ違った単独行者に次々と抜かれる。岩が多く歩きにくい道をヨタヨタしながらようやく和田小屋まで着いた。体力の余る息子はあまりの遅さに付いていけず、先に行っては待っているということを繰り返しながら下りてきていた。ここに来て漸く巻機山とご対面だ。駐車場までの道にはヤナギランが咲いていた。
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