燧ケ岳
ひうちがたけ
2356m
福島県
尾瀬沼から望む燧ヶ岳
登山日 2004年7月31日(晴れ) しんぷる
行 程 大清水(04:10)…【04:55一ノ瀬休憩所】…(1:00)…【05:55三平下06:00】…(0:45)…【06:45沼尻07:00】…(1:40)…【08:40長英新道分岐】…(0:20)…【09:00俎ー09:15】…(0:20)…【09:35柴安ー10:05】…(0:15)…【10:20俎ー】…(0:15)…【10:35長英新道分岐10:40】…(0:05)…【10:45ミノブチ岳】…(1:25)…【12:10浅湖湿原】…(0:15)…【12:25長蔵小屋付近12:50】…(0:25)…【13:15三平下】…(0:45)…【14:00一ノ瀬休憩所】…(0:45)…【14:45大清水】
 群馬県側の尾瀬登山口としては鳩待峠、富士見下、大清水がある。中でも鳩待峠からの入山者が多いが、これは起点からのアクセスによるところが大きいのではないだろうか。鳩待峠からは直ぐに至仏山登山道があり、また尾瀬ヶ原の西玄関口である山の鼻までは1時間ほどの下りである。
 一方大清水は林道歩きを1時間、さらに尾瀬沼までは三平峠越えで1時間〜1時間半をかけなければならない。鳩待峠に比較して倍以上の歩行時間を要求される。大駐車場があり駐車料金も格段に安いにもかかわらず利用者が少ない。両者の中間に位置する富士見下は交通の便が悪く、入山の起点としては位置的にも中途半端なのだろうか、利用者は最も少ない。
 最近、入山者を大清水へ誘導することによって鳩待峠からの入山者集中を緩和しようとする動きがある。一の瀬休憩所まで電気自動車を利用しての入山者輸送や、廃道となっている登山道を整備し、林道歩きをなくすなどである。いずれにしろ何かしら計画・実施されるに違いない。
 さて、尾瀬の山は至仏山、景鶴山、皿伏山、白尾山などを登っているが、どれも群馬県に属している。尾瀬を代表する山としては東の燧ヶ岳、西の至仏山だ。至仏山は鳩待峠から、そうなれば必然的に燧ヶ岳は大清水からと思い込んでいた。今回は大清水から入り尾瀬沼を巡り、登りはナデッ窪、下りは長英新道を利用した。ところが山行を終えて自宅でガイドブックを見てみると、鳩待峠〜山の鼻〜尾瀬ヶ原と歩き見晴新道を登り、長英新道を下り大清水に下山するコースが紹介されていた。全く考えてもみなかったコースで、よくよく調べてみれば時間的にはあまり変わらなそうである。むしろ短時間で済みそうだ。次回はこのコースで歩いてみよう。ただし一泊で。

大清水
 早朝4時の大清水駐車場は車もまばらだ。準備を整えて歩き出す。今日は長丁場だが午後4時までには戻りたい。従って12時間が与えられた時間となる。周囲はまだ薄暗く、林道脇に咲くオオウバユリの花が盛りなのか過ぎたのかも分からない。一の瀬休憩所を過ぎた頃にはすっかりと明るくなり天気は何とかなりそうだ。群馬県は雨/くもり、福島県は晴れ/くもりの予報だ。目指す燧ヶ岳は微妙な位置にあるが期待を持っていく。大清水からは2度目になるが、前回は尾瀬沼に姿を写す燧ヶ岳を見ることができなかった。なにせ雨が降っていたから…。

尾瀬沼山荘
 尾瀬沼への道を急ぐ。カラマツソウの咲く登山道は整備され歩きやすい。三平峠からの下りは濡れた木道で滑らないように注意が必要だ。尾瀬沼山荘に着くと沼ははっきりと見えているが、燧ヶ岳は基部が見えているのみである。しかし東側は日が差し込んでいて明るいし、徐々にガスもあがっていく気配だ。ナデッ窪にするか長英新道にするか考えながら歩いてきたが、晴れ模様なのでナデッ窪で登ることにする。途中からは振り返れば尾瀬沼方面が見渡せるコースとのことだからだ。長英新道は樹林帯を行くため展望は期待できないらしい。

沼尻平
 一息ついた後、沼尻を目指す。この道は前回、大清水平を抜けて皿伏山へ行ったときに通った道である。沼尻までは3Kmとあり、沼周囲を巡る平坦なコースであることから1時間程度で到着すると予想した。大清水平への分岐を過ぎ、小沼を左手に見ながら進めば沼尻川にでる。小さな橋を渡れば沼尻休憩所だ。ここは沼尻平と呼ばれ見晴方面へ木道が続いている。予想に反して45分で到着だ。休憩所前の十字路をナデッ窪方面に足を運ぶ。俎ーまで2.7q2時間10分とある。ナデッ窪は沼尻から高低差約600mを直登するので傾斜が厳しく、大きな段差を乗り越えて上り下りするコースだ。
 あまり歩かれないコースなのだろうか、登山道には笹や草が出しゃばっている。朝露かそれとも前日の雨でか笹などが濡れている。油断をしていたら膝から下がびしょ濡れでスパッツを着ける機会を逸してしまった。道は岩を乗り越えていくような感じである。木の根や倒木も多く残雪雪崩の跡のようである。多くの岩は苔むしていて、岩の隙間を覗けばヒカリゴケにもお目にかかれた。急登が続き歩幅も要求されるので疲れる。しかも思ったほどガスも晴れない。ぼんやりと尾瀬沼が見えるのみである。登りだして1時間ほどで一休みだ。岩に腰掛けておにぎりを一つ頬張る。このコースは登りに使うべき道だなあ。下りは危険だ。

長英新道分岐
 さあ急ごうか。相変わらず急登は続く。ガスが尾瀬沼方面から吹き上げてくるし、展望は期待できないなあ。急登が緩む。少し進むと再び傾斜がきつくなるが、それもわずかで長英新道への分岐点だ。俎ーまで300mとある。ここからは緩やかな登りで、登山道にはマルバダケブキの黄色が鮮やかだ。既に咲き終えてはいるがキヌガサソウも多く見られた。快適な道もつかの間、すぐに俎ーへの岩場の登りだ。山頂は完全に強風のガスの中で展望どころではない。そんな岩場の陰にトウヤクリンドウが逞しく咲いていた。山頂付近ではハイカーが岩陰に隠れて強風を避けている。ちょっと油断すれば吹き飛ばされそうだ。眼鏡もすぐに曇ってしまう。他のハイカーと同じように岩陰に腰を下ろし一息入れる。御池方面から登ってきたハイカー達は泥だらけのスパッツを着けている。道はぬかるんでいるようだ。長英新道も道は悪いらしい。

俎ー

柴安ー

ミノブチ岳
 さて燧ヶ岳のトップは柴安ーである。辺りはまるで見えないが柴安ーの頂上は踏んでおきたい。岩にペンキで描かれている「ハラ→」を頼りに一旦岩場を下る。道がハイマツの中に入った時にすれ違ったハイカーに「柴安ーはこちらで良いんですかぁ?」と尋ねると、「12分で着くよ。」との返事。すぐに広場のような鞍部に出ると、ひと登りで至仏山と同じような標石のある柴安ー山頂に着いた。当たり前に展望はないが俎ーよりは風が少ない。見晴方面をみればちょっとした広場だ。数組が見晴から登ってきた。靴を見ればあまり汚れてはいない。道を尋ねると、ほとんどが岩場で3時間ほどの登りだという。どうも見晴新道は快適らしい。柴安ーからは尾瀬ヶ原と至仏山の眺めが良いという。本当に残念だなあ。隣のピークが見えないのだから完全に諦めモード。11時までは上にいられる訳だが、早めに下りるとしよう。

尾瀬沼を見下ろす

長英新道

大江湿原
 俎ーに戻り、長英新道分岐までのんびりと歩いていく。さてズボンの裾も乾いたことだしスパッツを着けよう。やや下りの平坦な道を行けばすぐにミノブチ岳だ。山頂には大きなケルンが積まれ展望が良さそうだが、今日は駄目。道はケルンの前を左に折れ急斜面となる。気をつけて下った後一息つけば行く手の樹林帯が美しい。露岩や木の根の張りだした赤土の道を行く。道は水路となるためにえぐれてあまり良い道とは言えない。そんな道をしばらく行くと展望が良い場所に出た。やや霞んではいるが尾瀬沼がバッチリだ。辺りも明るくガスがどんどん上がっているようだ。この分では山頂からの展望もあるかもしれない。もう少し山頂で時間を過ごせば良かったかなあ…。でもまあ尾瀬沼から燧ヶ岳が見えれば今日のところは良しとしよう。
 やがて道は緩やかになるがぬかるみがひどくなってきた。湿地帯といっても良いところが何ヶ所も出てくる。雨が降った後の数日は利用したくない道だ。だらだらと続く平坦な道で靴とスパッツを汚して尾瀬沼周囲の木道に出た。そこは浅湖湿原だ。コバギボウシが咲き乱れる大江湿原の端を通り長蔵小屋に着く。ここで最後の休憩を取る。燧ヶ岳のビューポイントを過ぎるとすぐに三平下だ。大清水まで黙々と歩いた。
長蔵小屋
inserted by FC2 system