武尊山
ほたかやま
2158m
川場村・片品村・みなかみ町
沖武尊、中ノ岳、家の串
登山日 2003年9月28日(晴れ) しんぷる、KK
行 程 川場スキー場ゲート(07:15)…リフト最上部(08:45)…登山道合流(08:48)…剣ヶ峰山頂上(09:18)…武尊山頂上(10:55-11:55)…家の串(12:56)…剣ヶ峰(13:20-13:45)…前武尊山(14:03)…不動岳(14:50)…朝日小屋分岐(15:38)…川場野営場駐車場(16:25)
 ひょんな事から武尊山に登る事となった。初めての登山は川場野営場から前武尊に登り、翌日から心筋梗塞の疑いで1週間以上入院をするという事態を招いた苦い思い出がある。その後、武尊牧場と水上の武尊神社から登っている。今回は川場スキー場から川場谷野営場へと降りる因縁のコースを選んだ。今までの中で一番天候に恵まれた山行となったが、前武尊からコースを間違え不動岳コースへと迷い込んでしまった。しかし武尊山の全てを十分に味わえる山行となった。
鞍部から剣ヶ峰山を振り返る
 武尊高原川場キャンプ場駐車場では山田昇記念杯の開会式が行われているようだ。その脇を川場スキー場に向かって車を走らせる。季節はずれのスキー場は静かなもので、ゲートは閉ざされ一般車両は進入できない。その閉ざされたゲートの脇から進入し、立体駐車場の右脇を通り抜け車道に沿って歩き出す。この車道は剣ヶ峰山(西武尊)直下まで延びる最上部リフトの終点に続いており、その先は笹を刈った道を抜け登山道に出るとのことだ。

川場スキー場

剣ヶ峰山を目指す

ゲレンデを行く

剣ヶ峰山
 ゲレンデ内の車道を忠実に歩き高度を稼いでいく。途中にスキー場の施設が点在するが人気もなく静かなもので、空を舞うトンビが時折鳴き声を発するくらいのものだ。順調に歩いていくと目の前に剣ヶ峰山の見事なまでの大岩壁が姿を現した。そして間もなくリフトの終点に着くことができた。施設の近くの笹原を見るとややわかりづらいが明らかに笹が切れているのが見える。近くに寄ってみると笹が刈られて道となっている。これに違いない。案の定わずかに歩くと登山道に出た。登山道は抜かっていたのでスパッツを付けて歩くことにした。

沖武尊へと続く稜線

沖武尊への稜線
 剣ヶ峰山北面は紅葉が始まっていて黄色や紅色の葉が陽光で輝いている。樹林帯を抜け、多少荒れた丸太階段の急登を一気に上るとハイマツの原に出る。朽ちそうなベンチが置かれハイマツについての説明板が立てられていた。そこからは緩やかな上りで、登山道の一部のような剣ヶ峰山の頂上に立つことができた。西には玉原湖とその周辺の山々がはっきりと見える。前方を見れば武尊山(沖武尊)へと続く稜線が、さらに目をやれば中ノ岳〜家ノ串〜剣ヶ峰〜前武尊山〜不動岳へと続く馬蹄形の縦走路が川場谷を取り囲んでいる。山頂からちょっとした岩場を降り急斜面に気を付けながら下っていくと「裏見の滝」への分岐に出る。縦走路に入っていくとシャクナゲとハイマツの多い比較的歩き易い道だ。多少のアップダウンを繰り返しながら進む。ちょっとしたピークに山田登記念杯の係員が立っていた。「ご苦労様です」と声を掛けながら通りすぎる。おお、一人のランナーが走ってくるではないか。ゼッケン1、ここ数年連覇している人らしい。道を空けて「頑張ってください!」と声援を送る。時計を見ると9:50。川場野営場駐車場を8:30に出発してからまだ80分しか経っていない。とんでもない速さだ。とにかく優勝者は2時間あまりで14.8Kmの山岳コースを走り抜けるそうだから恐れ入る。

ハイマツと紅葉

山頂直下の登山者
ポツリポツリとランナーが向かってくる。その度に道を空け声援を送る。まるで沿道の応援者のようだ(苦笑)。
時折コメツガなどの樹林のトンネルを何度かくぐり抜け沖武尊を目指す。鞍部を過ぎ山頂直下まで来ると次から次へとランナーが走り抜けていく。すれ違いざま一般ハイカーが「山頂はものすごく混んでいるよ。」と一言。狭いガレ場をランナーに注意しながら少しずつ上っていく。ガレ場を過ぎると笹を切った急斜面の狭い登山道を団体が列をなして降りてくる。上り優先もあったものではない。その間じっと我慢強く待つ以外ほかに手はない。
ようやく山頂への分岐に差し掛かるとレース係員が数人で参加者のチェックを行っていた。その脇で中ノ岳方面から来る選手たちを見ているとさすがに疲れたのか苦しそうに上って来る。先頭はとっくにゴールしているだろう。30人以上の団体が降りた後にもかかわらず山頂はハイカーでごった返していた。笹をシート代わりにしてとにかく居場所を確保した。鞍部あたりからガスが出てしまい全く展望が得られなくなっている。沖武尊から剣ヶ峰山へと続く稜線が見事なだけに残念だ。

中ノ岳から家の串

日本武尊像
 1時間ばかり山頂で過ごしていると、どうやらガスが上がりそうな気配がしてきた。帰路にも時間がかかるし前武尊に向けて歩き出す。ガレ場を下っているうちに中ノ岳から家ノ串方面が姿を見せ始めた。稜線の登山道に沿って紅葉が見事に始まっている。その中を歩けるなんて幸運だ。

三ツ池と中ノ岳

沖武尊と中ノ岳
 中ノ岳頂上付近を注視すると踏跡がはっきりと見える。どうやら道がついたのだろう。三ツ池がある窪地を過ぎ笹を切った歩きにくい斜面を行く。崩落している箇所もあるが問題はない。そして足下がぬかった場所に出ると「笹清水」の水場だ。冷たく美味しい水を頂く。もうすっかりガスは晴れてきている。

家の串頂上
 武尊牧場への分岐を左に分け前武尊を目指す。紅葉に彩られた縦走路は気持ちのよい快適な道で気持ちも弾む。家ノ串頂上は登山道の一部といった感じだ。前方にそびえる剣ヶ峰を目指そう。やや痩せた稜線を行くと剣ヶ峰の基部に出る。右手に巻道があるが大展望を楽しみに鎖につかまると難なく岩峰の上に立つことができた。眼前には歩いてきた縦走路が余すことなく広がっている。こうして改めて見ていると武尊山は実に良い山だ。あまり良い印象を持っていなかったのだがもう一度登ってみたいと思ってしまった。

剣ヶ峰主峰
 本当に良く歩いてきたなあ。武尊牧場方面も一望だ。尾瀬方面は雲がかかっていて見る事ができない。残念ながら今日は周りに雲が多く遠望が利かないのだ。行く手には剣ヶ峰主峰が待ち構えているが崩落が激しく通行禁止になっている。十分に展望を楽しんだ後、鎖を頼りにほぼ垂直な岩峰を下降し巻道と合流だ。前武尊は近い。振り返れば崩壊した剣ヶ峰主峰の白い岩肌が美しい。
 樹林帯を行くとわずかで前武尊に着く。あまり展望の利かない山頂には数人のハイカーが休憩をしていた。後は川場野営場駐車場に下るだけだ。オグナスキー場方面ではなく旭小屋方面を目指す。木の根の張り出した歩き難い急斜面を下っていく。しばらく降りると何か変だと感じた。改めて地図を見ると予定したコースではないではないか。オグナスキー場方面に下り途中で分岐し野営場に下るコースを採ることになっていたのだが、確認しないまま川場方面に降りてきてしまったのだ。相棒に訊くと、今更戻れないだろうと言う。不動岳を経由しなければならない。以前1回だけ歩いているので心配はないが多少のアルバイトを強いられる。

不動岳の鎖場

不動岳からの前武尊と剣ヶ峰
 不動岳は修験者の修行場のようだ。それだけに鎖場も多くあり険しい岩峰を登ったり巻いたりと忙しい。切迫した危険を感じる場所ではないが十分な注意が必要だ。「背すり岩」「カニの横ばい」などとそれぞれに名前が付けられている。ここからは前武尊と剣ヶ峰の展望がすばらしい。旭小屋への分岐を右に分け野営場へと進む。尾根を外れジグザグと荒山沢へ向かって降りていく。沢を渡ればわずかで野営場だ。もはやこの野営場を利用するものはないのではないかと思われる。駐車場に着くと前日に張られていた登山レースの横断幕も取り外されていた。やはり前日に回しておいた相棒の車と他に2台の車があるだけの静かな駐車場だった。
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