丹後山・大水上山・越後中ノ岳
たんごやま・おおみなかみやま・えちごなかのだけ
1808m・1831m・2085m
みなかみ町・新潟県
丹後山から望む大水上山
登山日 2003年8月12〜13日(雨のち晴れ) しんぷる息子
行 程 【1日目】十字峡(10:25)…丹後山登山口(11:12)…1合目(11:37)…2合目(12:11-12:30)…3合目(13:02)…4合目(13:31)…5合目(13:55)…6合目(14:10)…7合目(14:27)…8合目(14:41)…9合目(14:58)…丹後山避難小屋(15:05)
【2日目】避難小屋(06:10)…丹後山(06:18)…利根川水源の碑(06:48)…大水上山(07:04)…兎岳(07:40-08:10)…池の段(10:52)…中ノ岳(11:13-11-20)…中ノ岳避難小屋(11:25-12:21)…池の段(12:38)…7合目・小天上(13:19)…5合目・生姜畑(14:02-14:10)…2合目・千本松原(15:14)…1合目(15:51)…十字峡(16:20)
 大水上山、群馬県最北の地。そして利根川の最初のひとしずくが生まれる地でもある。この山の存在を知った時から、いつか必ず訪れてみたいと想い憧れていた。そして一人ではなく息子と一緒に訪れてみたいと思っていた。憧れの山は思い描いていたとおりの期待を裏切らないものだった。
 初めての一泊山行であり、何かと不安や心配が付きまとってはいたが、終わってみればとても充実した山行であった。ただ、中ノ岳からの下りは長くとても辛い道のりだった。

カモエダズンネ
 十字峡に着いても雨は降り止まず車中で様子を見ることにした。小降りにはなるがなかなか止むまではいかない。10時30分、意を決して歩き出す。明日にかけて天気は回復するはずだ。三国川沿いの林道は落石のため車両通行止めとなっている。澄んだ渓流やそれに流れ込むいくつもの沢を眺めながら歩く。栃の木橋を渡ると50mで登山口だ。見れば息子はすっかり汗まみれになっている。32Lのザックとポンチョが効いているのだろう、「暑い、あつい」を繰り返して歩いて来ていたのだから。

十字峡登山センター

栃の木登山口

急登を行く
 登山カードを投函して登りに入る。いきなりの急登だ。階段状になっていなければアキレス腱が限界まで伸び切ってしまいそうな傾斜だ。それも容赦なく直線的に続いている。こんな登りが延々と続くのだろうか?それに今回は初めて避難小屋泊りの一泊山行でありザックもそれなりに重い。息子も久しぶりの山行で、しかも天気は雨だ。体力的には心配はないと思うが、山の歩きともなれば体が慣れるまではきつく感じるに違いない。ゆっくりと歩こう。今日は展望は全く期待できない。期待するのは雨が上がってくれることと明日の天気だけだ。ひたすら急登は続き我慢の登りとなる。
 息子が遅れる。途中で立止ることが多く、声をかけながらの登りとなった。折角付いて来てくれたのにこんな雨になって申し訳ないと思いながらも登るしかない。とにかく1合目の「鉄砲平」に着いた。まだ1合目だけれど、それよりも1合目に着いたことを2人で喜んだ。ザックが重く肩に食い込んで痛いと言う。仕方がないので私の日帰りザックと交換する。一休みの後歩き出す。

3合目大松
 相変わらずの急登だ。夏のこのコースはとにかく暑く、体力の消耗と水の消費が激しいと聞いていた。生憎の小雨ゆえに、それが返って良い結果になっていた。2合目までは口からの水分補給を行わずに登ってきた。ところがどうも息子の調子がおかしい。気分が悪いと言う。とにかくこの2合目で昼食を取ることにした。松の根本に息子を座らせて休ませ、定番のいなり寿司を出す。とにかく食べさせなければバテてしまう。どうにか3個口にさせて様子を見た。回復しなければここから戻るしかあるまい…。そろそろ歩こうと息子。早く行って避難小屋で休もうと言う。どうやら大丈夫のようだ。
 2合目から3合目までは一旦下りになり、しかも平坦な道で比較的楽に歩くことができる。3〜5合目はまた我慢の急登だ。5合目を過ぎしばらく歩くと潅木帯となる。左手は大分開けてきて、天気にさえ恵まれれば素晴らしい展望が広がっていそうな気配だ。7合目からはチシマザサを切った道を行く。行く手には幾つもの小さなピークがあり、一つ又ひとつと越えていく。そしてシシ岩と呼ばれるちょっとした岩場の8合目に着いた。先には気持ちの良さそうな笹を切った道が続いているだけだ。雨もほとんど感じないくらいにはなっていた。

9合目の道標
 雨脚が強くなってきた頃にようやく道標が見えてきた。登山口以来の久々の道標であり9合目である。右方面は巻機山、直進すれば水場、そして左は中ノ岳、丹後山避難小屋である。避難小屋まではわずかだ、急ごう。ガスの中にぼんやりと避難小屋が見えてきた。先を行く息子が「ついたぞーっ」と声を出した。

丹後山避難小屋
 中には誰もいなかった。恐らく今日は貸切だろう。荷物を下ろし濡れた服を着替えた。やれやれほっと一息である。小屋は小奇麗で30人近くは泊れそうである。入口の脇には天水を蓄えたタンクが置かれていた。トイレはいったん外に出てから利用する。明日の天気がすべてだ。祈るような気持ちで眠りにつく。

丹後山での夜明け
 夜が明けてきたようだ、東側の窓が赤い。雨音もしないし風もないようだ。起き上がって東側の窓を開けると山並みが見渡せる。やったあ〜。用意を整えて待望の出発だ。避難小屋を後にして登山道に出ると中ノ岳が大きく聳えている。やはりこの山域の盟主なのだろう、堂々とした山容が見事だ。天気もどんどん良くなりそうだ。

避難小屋前から望む中ノ岳

丹後山避難小屋を振り返る

丹後山頂上
 快適な草原と笹原を行くと丹後山頂上だ。無理矢理山頂と定めたような何の変哲もないような場所だが、その存在を誇示するように「山頂」とあった。周りに目をやれば娘と登った巻機山が、そして武尊山、至仏山、平ヶ岳、三角の山頂が見事な荒沢岳などが見渡せる。そして行く手には大水上山への気持ちよさそうな上りが続いている。

大水上山を背に

雲海

三国川ダムを見下ろす
 笹はよく刈られ快適な登山道だ。のんびりと緩やかな上りを行くと「利根川水源」の石碑に到着だ。更に歩くとひょっこりと大水上山の頂上に出た。ついに来たのだな。群馬県の最北の地だ。思い描いていたとおり雪渓が群馬県側に一直線に下っていた。

利根川水源の碑

兎岳を望む

大水上山頂上

兎岳頂上

丹後山方面を振り返る
 縦走路を眺めると兎岳が立ちはだかる。ピークを極めれば下るのが常。やや急な下りだ。先程までの道と違い刈り払いされていないためズボンがびっしょり濡れてしまった。時々立ち止まっては展望を楽しむ。平ヶ岳は指呼の距離だ。ガスがでたり晴れたり目まぐるしいが、中ノ岳方面はガスが少ない。笹を切った道が相変わらず気持ちよく続いている。三国川ダムも案外近くに見える。一汗かく頃に兎岳山頂に着いた。

中ノ岳が近い
ようやく日が射してきたためか、暖かくなってきた。これから暑くなりそうだぞ。中ノ岳の登りに入るまではアップダウンを繰り返しながら徐々に下っていくようだ。
 左に巻くように急な斜面を下る。滑りやすく注意が必要だ。小兎岳とのコルに降りると雪渓が間近にありその一帯はお花畑になっていた。イワイチョウが大群生していた。そしてハクサンコザクラ、ニッコウキスゲ、コバイケイソウ、イワショウブなどが目を楽しませてくれた。

雪渓で遊ぶ
 息子は雪渓に降りて戯れた。小兎岳へやや急な登りを過ぎるとシラビソの樹林帯だ。特に山頂標識もなく通り過ぎてしまう。ずっと笹原を歩いてきただけに何かうっとうしいような感じを受けた。小兎岳を下りちょっとした岩稜で小休止。息子が持ってきたレモンを味わう。中ノ岳は近い。

シシウドと荒沢岳

池の段は近い

9合目池の段
 痩せ尾根の道を注意しながら進む。小さなアップダウンが続く。平坦に見える稜線も意外とてこずる。4時間程度で中ノ岳に着くと踏んでいたがとんでもないようだ。振り返れば丹後山も遥か遠くに見えるようになった。よく歩いてきたものだ。息子と交わす会話もまた楽しい。ようやく下り終わったみたいだ。いよいよ中ノ岳への登りに入る。ここからは山頂はまるで見えない。目の前に見えるピークらしきものを目標に一歩一歩急登を行く。

近くに中ノ岳避難小屋

中ノ岳頂上

避難小屋前
 切立った岩場のヤセ尾根を過ぎると9合目の「池の段」に着いた。十字峡への分岐を左に分け稜線の岩場を行く。おや、ハイカーが下りてくるぞ。女性の単独行者だ。十字峡からのピストンだそうだ。上り5時間だって、ふーん。駒が岳までですかと聞かれたので、丹後山一泊で来ているので十字峡に下ります、と答えた。 残りわずかだ、一気に登ると待望の山頂に出た。そこには立派な方位盤が置かれていた。これまでの縦走路を改めて振り返る。丹後山避難小屋がとても小さく見える。本当によく歩いてきたものだ。息子と二人で健闘を称え合う。ゆっくりと昼食を取るには中ノ岳山頂は狭くそれに暑い。中ノ岳避難小屋で休憩をとることにした。小屋の前には昨夜泊ったと思われる数人のハイカーが宴会をしていた。挨拶を交わして中に入るとその内部は丹後山避難小屋と似た造りになっている。涼しいが空気がよどんでいる気がした。暑いのを我慢して外で昼食とした。

日向山への下山路
 山頂まで戻り下山路を確認する。ガイドマップによると4時間強の行程だ。遠くに日向山の建造物が見える。急斜面を下った後、アップダウンを繰り返して日向山に到着するように見える。その先は見えない。池の段まで戻り右に進路を取る。厳しい下りだ。それに太陽がじりじりと照りつける。

笹原の急斜面を下る
 慎重に下る。8合目、7合目(小天上)と厳しい下りが続く。7合目を過ぎて上ってくる夫婦連れのハイカーにすれ違う。恐らく避難小屋泊りだろう。すれ違いざまに「厳しい山ですね」と男性がもらす。二人とも悲壮感さえ漂わせている。息子と二人、これからもっときつくなるのに大丈夫だろうかと顔を見合わせてしまった。

5合目生姜畑から望む中ノ岳
 6合目から「生姜畑」と呼ばれる5合目までは傾斜が緩み、地塘も現れほっと一息である。沢のような登山道を上ると、ようやく最初の目標点である建造物の下に着いた。生姜畑の道標には「千本松原」まで1.7Kmとある。振り返ると中ノ岳は大きく高く聳えている。下ってきたなあ。ようやく半分だ。縦走路に目を転じると中ノ岳から兎岳までは小刻みなアップダウンがよく見える。なるほどてこずるわけだ。丹後山避難小屋も小さく見える。さあここから再び急斜面を降りなければならない。道は樹林帯の中へと入って行く。

岩場を降りる
 鎖場あり岩場下りありと、辛い下りが延々と続く。息子は下りが苦手なのか遅れがちだ。時間は十分あるので怪我のないように慎重に歩かせる。4合目、3合目と小休止をしながら歩く。まだ千本松原ではないのか。歩く歩く歩く、ひたすら歩く。2合目に着いた。千本松原である。振り返れば日向山が大きい。ちょうど日向山から中ノ岳を仰ぎ見るような感じだ。道標に十字峡まで2Kmとある。
 鎖場を過ぎひたすら我慢の下りだ。やがて1合目。力を振り絞って歩くとやがて道は平坦になり、沢の音が間近に聞こえるようになった。そしてついにコンクリートで固められた階段となり、長く辛い中ノ岳からの下りが終わった。丹後山から大水上山までの往復ならいいが、十字峡から中ノ岳は2度とご免だ。そして山頂付近で言葉を交わした女性のことを思い出し、息子と二人で大いに感心した。
中ノ岳登山口
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