万太郎山
まんたろうやま
1954m
みなかみ町
大障子ノ頭から望む万太郎山
登山日 2003年6月22日(晴れ) しんぷる
行 程 土合(04:18)…西黒尾根登山口(04:44)…ラクダの背(06:27-06:38)…ガレ沢のコル(06:41)…ザンゲ岩(07:39)…トマの耳(08:00-08:10)…肩の小屋(08:12)…オジカ沢ノ頭(09:00-09:06)…小障子ノ頭(09:37)…大障子ノ頭(10:12)…万太郎山(11:07-11:30)…大ベタテ沢ノ頭(13:05)…谷川新道分岐(14:03)…土樽駅(15:00)
 谷川岳と平標山とを結ぶ谷川連峰主稜線の中間地点が万太郎山だ。谷川岳からこの稜線を見た時から歩いてみたいと思っていた。肩の小屋から笹原を切って続く道は途切れることなく延々と続いているような錯覚さえ覚える。ついに歩く機会が訪れた。梅雨の晴れ間、願ってもない絶好の天気。万太郎山までの道のりは長かったが、実に楽しいものとなった。 万太郎山から望む谷川岳方面
 帰りのことを考えて土合駅前に駐車する。既に数組が準備をしている。皆それぞれの想いを胸に歩き出すのだろうなあ。今日はようやく谷川連峰の主稜線を歩く機会を得て期待に胸が弾む。しかし予定していた時間より40分ほど遅れているのが気がかりだ。車道を歩き、谷川岳登山指導センターに届を出す。直ぐに西黒尾根登山口だ。谷川岳への正面玄関といってもいいだろう。
 いきなりの急登で露岩も多く歩きにくい。周囲はブナの樹林帯で展望はないが今日はあまり気にならない。ここを抜ければ直ぐに期待通りの展望を得られることがわかっているからだ。長丁場でもあることだし慌てずに歩くこととする。奥の登山口からの道を合わせると直ぐに鉄塔に出る。見上げれば太陽の光が眩しい。足下にはギンリョウソウが多い。こんなに数多く生えているのを見るのは初めてだ。
 起きてから何も口に入れていないせいか、力が抜けていくような気がしてきたので「谷川岳3時間」と書かれた道標の近くに腰を降ろし、おにぎりを一つ口にした。心なしか元気になったぞ、さあ歩こう。

西黒尾根登山口

東尾根

ラクダの背
 やがて樹林帯を脱し南方の展望が開けてきた。ロープウェイが動いているのが見える。腕時計を見ると6時を回ったところだった。前方に見えるのはラクダの背だろうか?道は完全に展望のきく尾根に出て開放感に溢れる上りとなる。天気もいいし最高だなあ。いくつか鎖のついた岩場を軽快に上るとそこが「ラクダの背」だった。天神尾根や東尾根、そしてこれから歩いていくガレた西黒尾根を眺めながら一休みだ。
 先には二人のハイカーの姿が見える。後方から二人組のハイカーが上ってきた。話を聞いていると、ここまで休みなしで1時間半、トマの耳までは50分くらいで大丈夫だろう。さらに午前中に清水峠まで行ってしまおうとのことだ。いやあ、すごい人もいるものだ。これは先に行ってもらわなければなるまい。巌剛新道からの道を合わせる「ガレ沢のコル」には続々とハイカーが上がってきている。こちらもうかうかしていられないぞ。二人の後について歩き出す。

岩場だ

氷河の跡

西黒尾根
 ガレ沢のコルに着くと既に誰もいなかった。さあこれからはガレ場の上りだ。ここまでは予定よりだいぶ早く着いている。出足の遅れを取り戻した感がある。コルから上り始めるとホソバヒナウスユキソウ、ハクサンコザクラ、ハクサンイチゲなどが目を引く。思わず近寄ってデジカメに納めることが多くなり、一向に先に進まない。時間も気になるところだがどうしようもない。見るものは見るのだ。傾斜がきつくなり足がどんどん重くなる。しかし、花と展望に助けられながら徐々に高度を稼ぐ。やがて「氷河の跡」と呼ばれる広い一枚岩を過ぎると直ぐに「ザンゲ岩」だ。踏み跡がついていて上れるようだったが遠慮した。傾斜が緩やかになり肩の広場のケルンが見えてきた。「トマの耳」に行くか迷っていたが折角だからと足を運ぶ。

トマの耳とオキの耳
 山頂の一角に腰を下ろし2つ目のおにぎりを口にした。次から次へとハイカーが上がってくる。時間が早いせいかさほど混み合っていない。ゆっくりと時間を取りたいのだが、着いたのが8時。予定ではこの時刻に万太郎に向けて歩き出していなければいけない。のんびりと腰を降ろして過ごしているハイカーを横目に立ち上がった。
 肩ノ小屋の周囲は静かなものだった。縦走路は誰も歩いている様子がない。さあ、ここからが以前から歩いてみたかった道だ。期待に胸がはち切れんばかりに笹原に切り開かれた縦走路に一歩を踏み出す。足下にはハクサンイチゲの群生だ。このまま花の街道となるのだろうか。しかし道は悲しくなるくらい高度を下げていく。ほぼ下りきったところに「中ゴー尾根」への分岐があった。ここが急登で有名な中ゴー尾根へ続いている道かあ。自分は一生歩くこともあるまいと思った。「川棚ノ頭」を左前方に見、正面には「オジカ沢ノ頭」を眺めながらの快適な歩きとなる。

肩の小屋

万太郎山への稜線

オジカ沢ノ頭へ
 オジカ沢ノ頭に近づくと痩せた尾根の岩場となり、尾根を歩いたり南方に巻いたりしながら進む。何度も偽ピークにだまされながら想像していたより広いオジカ沢ノ頭に出た。振り返ると谷川岳や一ノ倉岳、茂倉岳が大きい。目指す万太郎山も大きいなあ。しかし途中の上り下りがこんなにあるなんて思ってもみなかった。肩ノ小屋から見たときはもっと平坦に見えたのになあ。ここで地図を広げてコースの確認をする。気になるのは土樽での電車の時間だ。先ずは順調である。前方の眼下にはかまぼこ型の避難小屋が見える。「オジカ沢ノ頭避難小屋」だ。あまり広くなく5人も泊まれるかどうかといったところだ。

オジカ沢ノ頭

一ノ倉岳と茂倉岳

大障子避難小屋
 再び高度を下げる。ここで進路をやや西方にとる。花は大分少なくなってきた。笹原も濃くなってきている印象だ。足下を動くものがある。よく見てみると体長10cm程のカエルである。何でこんな所で生きているんだと不思議でならない。ここに来て気温が上がってきたのか暑い暑い。あいにく風もない状態である。しかも数匹のブヨが顔の周りを飛び回っていて煩い。大展望に励まされながら歩く歩く歩く。「小障子ノ頭」への上りに入る。上に二人のハイカーが見えるが動きがない。近づくと「おーい、道をあけろ。」と声がかかった。団体が登山道に腰を下ろしていた。6〜8名のハイカーが一斉に立ち上がり道を譲ってくれた。すぐに小障子ノ頭に着いた。標柱もない。あれー、こんなものかなと通り過ぎる。
やっぱり下っていく。振り返るとオジカ沢ノ頭の大きさが一際目立つ。と言うことは徐々に下っていることになるわけだ。一抹の不安が胸をよぎる。先には避難小屋が見える。「水場15分」(往復時間らしい)の道標を過ぎると「大障子避難小屋」だ。中を覗くと傘やペットボトル、新聞紙などが置かれていて、10人は楽に泊まれそうな広さだった。「大障子ノ頭」への道をひたすら歩く。暑い。水分補給の回数も多くなる。ここまで1.5L弱のスポーツ飲料を消費している。大障子ノ頭にも標柱はなく張りあいが悪い。

赤谷川への雪渓
 ここからはちょっとした岩場を降りる。やや北側に巻くように下りていくと、大障子ノ頭は以外と険しい岩峰だったことに気づく。いよいよ万太郎山への上りを残すのみだ。よくここまで歩いてきたものだ。しかし平標山まで日帰り縦走する強者もいる。自分にはまあ無理だ。肩ノ小屋から見た感じと違って上り下りの多い道だった。しかし気持ちの良い道だったことも確かである。万太郎山を見上げる。あと30分くらいだろうか。足はヨタヨタしてきているし、ゆっくりと上がるしかあるまい。日差しはますます強く感じる。後わずかというちょっとした岩場に腰を降ろし、今まで歩いてきた笹を切った道と谷川岳方面を眺めながら、ミカンの甘いシャーベットを食した。一涼の風がそっと顔のあたりを吹き抜けていく。元気が甦ってきた。さあ、あと一息だ。「吾策新道」への分岐を右に分け山頂への笹道を急ぐ。人の声が聞こえるとそこが頂上だった。
 あれ、こんなものかなと思ってしまった。山頂の標柱の周りには5〜6人のハイカーが我が物顔に腰を降ろしていた。おまけに小さなハエが足下の岩に群がっている。誰かの広げた白いタオルにもびっしりだ。ガレ沢のコルを過ぎた当たりから悩まされてきたブヨから解放されたと思ったら今度はハエだ。時間から見て40分くらいはゆっくりできると思っていた万太郎山の頂上だが、暑さも加わりゆっくりしていたいとの思いは萎えてしまった。それでも頂上の一角に腰を降ろして昼食とした。
仙ノ倉山が大きいなあ。その後ろにちょっとだけ平標山が頭を出している。茂倉岳からの尾根も見事なものだ。今日は残念ながら吾策新道を下る。もう一度360゜の大展望を楽しみ分岐まで戻る。さあこれからは土樽駅を目指して下るのみだ。

万太郎山頂上

吾策新道を下る

荒々しい万太郎山の岩峰を振り返る
 分岐には土樽へ3時間とある。ここでラクダの背からしまい込んでいたストックを用意した。膝への負担を避けようという心算だ。道は露岩帯の急斜面で非常に歩きにくい。ここではとても時間を稼げないだろう。慎重に下りていくしかない。笹を切り開いた道には劣化したロープが張ってあった。眼下には関越道土樽パーキングが見えている。いやあ、大分距離があるなあ。しかし吾策新道はコースが見えていて安心だ。とにかく我慢して下る。途中に何度もアカモノの群生があり、またウラジロヨウラク、ベニサラサドウダン、イワカガミなどが多く目を楽しませてくれる。 「井戸小屋沢ノ頭」を過ぎ更に下る。やがて樹林帯の緩やかな上りになると「大ベタテ沢ノ頭」だ。この辺りは歩き易く気が休まる。「舟窪」を過ぎると再び道は傾斜を増し歩きにくい。周囲はブナの樹林帯になっている。長い下りだ。下れど下れど道は下に続く。やがてブナの樹林帯は一斉に杉の樹林帯に変わった。豪雪地帯を物語るように杉の根元は谷側に湾曲していた。杉を見ると人間の生活圏に入ってきた気がして、もうすぐ下り着くような気にさせられたがなかなか着かない。とにかく下るしかない。土樽には早く着きすぎるのではないかと危惧していたがとんでもなかった。
やがて沢の音がしてきた。そしてとうとう「谷川新道」分岐に出た。大きく左に曲がり沢に下りれば「クワノ沢」だ。ここで手と顔を洗い汗を洗い落とした。先を急ごう。まもなく登山道から解放され車道に出た。やれやれだ。振り返ると万太郎山が高く大きく聳えていた。

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ギンリョウソウ

ヒロハウキザサ

コケイラン?

タニウツギ

ゴゼンタチバナ

ミヤマカラマツ

サラサドウダン

ホソバヒナウスユキソウ

タテヤマリンドウ

ハクサンコザクラ

ハクサンイチゲ

???

ツバメオモト

オゼソウ

ベニサラサドウダン

ヨツバシオガマ

ハクサンチドリ

ツマトリソウ

ナエバキスミレ

ウラジロヨウラク

シナノキンバイ

アカモノ

ムシトリスミレ
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