湯の丸山・烏帽子岳
ゆのまるやま・えぼしだけ
2103m・2065m
嬬恋村・長野県
籠の登山から湯の丸山と烏帽子岳
登山日 2002年10月10日(晴れ) しんぷる
行 程 地蔵峠駐車場(6:00)…狐平(6:35)…湯の丸山頂(7:12-8:10)…コル(8:28)…烏帽子岳稜線(8:51)…烏帽子岳山頂(9:10-24)…コル(09:51)…地蔵峠(10:35)
 湯の丸山はレンゲツツジが有名である。今年その時期に妻と彼女の職場仲間と一緒に歩く計画だったが残念ながら果たせなかった。この近くには池ノ平湿原があり、夏の花が咲き誇る時期には多くの観光客が訪れるという。そしてこの山域の頂は展望が優れることも知られている。秋真っ盛り、紅葉の時期に大展望を期待してやってきた。展望はそこそこだったが、湯の丸山頂で思いもかけずブロッケン現象に遭遇した。初めての経験であり大変貴重な山行となった。 南峰から北峰方面
 いつもの支度で車を降りると早朝の湯の丸高原はさすがに寒かった。少し迷ったが道具箱にあったトレーナーを着込んだ。地蔵峠から湯の丸山方面を見ると斜面にリフトがのびている。反対側に道を渡ると直ぐに登山口の道標が目に付いた。リフトに沿って続いている踏み跡を歩き出す。まだエンジンが暖まらないためか登りがきつい。急ぐ必要もないので暖機運転を心がける。草地に牛糞が数多く落ちている所をみると、ここは夏の間牛が放牧されているに違いない。草食動物の糞であるから踏んでも大した事はないが、一応避けて歩くことにした。時折吹く風に耳が痛い。汗拭き用の手ぬぐいを取り出して両耳の上を覆って頭に巻くと気にならなくなった。

地蔵峠登山口

林道崩壊地

広い登山道
 わずかでリフトも終り平地に出た。登山道右手には柵がめぐらされていたが、所々出入りが出来るようになっており「つつじ平」と書かれた道標が立てられている。湯の丸山は6月頃のレンゲツツジが有名である。少し気になったので出入口から入ってみることにした。ツツジの株が斜面一帯を覆っていて、その間に無数の踏み跡が残されていた。おそらくツツジの時期には大勢の観光客が所狭しと歩き回るのであろう。しばらくはその誰もいないつつじ平を上って行った。そして頃を見計らって登山道に戻った。すると東屋が目についたので平坦な登山道を少し戻ってみた。付近には道標と鐘が設置されている。ガイドブックによるとどうやらこの辺りを「狐平(コンコン平)」と呼ぶらしい。湯の丸山だけに差していた陽の光がようやくこの孤独なハイカーにもあたってきた。寒さが消え暖かさを感じるようになった。太陽のありがたさを感じる時である。


登山道から湯の丸山

南峰のガレ
 いよいよ湯の丸山頂に向けての上りとなる。太陽の光を浴びてきらきら輝く黄葉の中をほぼ一直線に道が続いている。道は岩が露出していて決して歩き易くはないが、やわらかな陽射しのなか時折後ろを振り返り徐々に高度を稼いでいった。やがて道標とケルンのあるガレだけの山頂に着いた。ここが南峰のはずだが山頂標柱はなかった。こちらの方が標高があることになっているのだが・・・。東の方に目をやると「籠の登山」は山頂付近が雲の中だった。こちらも徐々にガスが発生してきて北峰方面がぼんやりしてきた。とにかく北峰に向かって歩き出した。するとどうだガレ場ではなくなり草原の様相を示してきた。夏には多くの花が咲き誇っていたに違いない。緩やかな上りの後、再びガレとなると大きな岩が積み重なった上に山頂標柱が立てられていた。

北峰

ブロッケン現象

登山道から鋸山
 山頂の西側からガスが吹き上がって来る。太陽も遮られカメラを持つ手がかじかんで来たが、しばらく待っていれば晴れてくるだろうと気長に待つことにした。するとその時、谷から吹き上げて来るガスの中に丸い虹が発生しているのに気がついた。そして良く見るとその円の中に黒い人の影らしきものが映っていた。ひょっとしてこれが「ブロッケン現象」というものだろうか?きっとそうに違いない。それは数秒で消えてしまうものだったが、吹き上げてくるガスの状態により何度もなんども現れた。果たしてカメラに収まるか分からなかったがシャッターを何回も切った。あっという間に時間が過ぎていった。

紅葉

山頂への稜線

烏帽子岳頂上
 ガスはなかなか完全には切れなかったがいつまでも待つわけには行かない。南峰に戻り烏帽子岳を目指すことにした。道標に従ってガレ場を降りていくと、烏帽子岳のガスはすっかり晴れていた。コルへの道はやはり岩が露出していて歩きにくくしかも急傾斜である。ゆっくりと降りることにした。そうすると足元の植物が見えてくる。するとどうだ、上りには気付かなかったが色々な種類の植物が目についた。この山はレンゲツツジが有名だが、ひょっとして素晴らしく植生豊かな山なのではないか。これは将来ツツジを見に来たときに再び登ってみなければなるまい。ほどなくコルに到着。道標が地蔵峠と烏帽子岳を指している。 烏帽子岳を見上げると気持ちの良さそうな稜線が見える。稜線からの展望は素晴らしいだろうか、期待を胸に足を進める。上りは案外楽で今登ってきたばかりの湯の丸山を何回か振り返り、烏帽子岳の稜線を目で追いながら快調に足は進んだ。そして稜線に出た。稜線を烏帽子岳に向かう。小烏帽子を越えると平坦な散歩道の様相になる。目の前には頂上へと続く稜線が気持ち良く延びている。はるか向こうには北アルプス槍ヶ岳が雲の上から頭を出していた。富士山はやや霞んではいたもののはっきりと目視出来たが、残念ながら八ヶ岳は頭を雲に隠していた。そして眼下には佐久市を始め周辺の町を一望に出来た。こんな稜線が大好きになった。最後に岩場をひと上りで烏帽子岳頂上に立つ事が出来た。更に道は角間温泉方面へと続いているらしかった。

烏帽子岳頂上を望む

烏帽子岳山腹の紅葉

地蔵峠への道
 コルまでは往路を戻ったが、頂上から降りて少しの所にコル方面に向かって踏み跡があるのが分かった。目で追ってみたが途中で消えているようでもあり踏み込むのは止めた。コル付近でようやく一人のハイカーとすれ違った。そして登山道の脇から踏み跡が上に続いている場所があった。急登ではあるが道ははっきりとしている様だ。おそらく下りの短絡路として歩かれているものだろう。この道は使えそうだと思った。コルに戻るまでには数組のハイカーが烏帽子岳に向かって行った。
 コルから今度は地蔵峠に向かって歩いていく。ゆるい傾斜の下りだ。黄葉したカラマツ林の中の笹道を行く。やがて辺りは広葉樹の雑木林になるが再びカラマツ林に戻った。地蔵峠まで2000Mの道標を過ぎると傾斜がやや急になるがそれもわずかでゆるい下りに戻った。途中小学生の遠足だろうか長い行列にすれ違うことになった。仕方がないので道を譲り通り過ぎるのを待ったが、子供達が「こんにちわ」とかけてくる挨拶の返答にはほとほと疲れ果ててしまった。笑顔を絶やさずにいるのも労力が要るものだ。

白窪湿原
 つつじ平への分岐を過ぎ間もなく、白窪湿原の前に出た。この湿原はキャンプ場で管理しているらしく柵が巡らされていた。そしてキャンプ場内を抜け荒れた砂利道を通り駐車場に戻った。そこには湯の丸山に登る小学生の団体が教師から登山の注意を受けていた。
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