朝日岳
あさひだけ
1945m
みなかみ町
烏帽子岳からの朝日岳
登山日 2002年9月22日(曇り) しんぷる
行 程 東黒沢(5:25)…ヒノキのウロ(6:34)…松の木沢の頭(7:36-41)…白毛門(8:32-38)…笠ヶ岳(9:32-40)…烏帽子岳(10:05)…朝日岳(10:50-11:43)…笠ヶ岳(12:42-45)…白毛門(13:30-35)…松の木沢の頭(14:07)…ヒノキのウロ(14:42)…東黒沢(15:30)
 白毛門から笠ヶ岳を経て朝日岳を往復するには、およそ10時間を超える行程となるため早朝の出発だ。白毛門までは妥協を許さない急登の連続を予想していたが、思いのほかあっさりと着いてしまった。しかしここからが遠かった。笠ヶ岳までは何とかなった。さらに朝日岳までは烏帽子岳と呼ばれる峰をいくつも超えて行かねばならない。多くのハイカーが山頂付近で動いているのが見える。まだあんなに歩くのか。くじけそうな気持ちにむち打って朝日岳を目指した。 馬蹄形マップ

白毛門
 東黒沢の駐車場に着いたときはまだ辺りは暗かった。明るくなるのを見計らって出発する。立派な小橋を渡りしばらく行くと道標があり左へと進む。いよいよ白毛門への急峻な登りとなり、行程も長いことからゆっくりと標高を稼ぐことにする。先ずはブナの巨木が数多く目につく樹林帯で、下が湿っているためやや滑りやすい道だ。朝まだ早くうっそうとした感じを受ける。やがて登山道は尾根道になり傾斜を増してきた。展望はまるでない。ひたすら歩く。
 何やら気分が悪くなってきた。おかしいなあ、夕べ飲み過ぎたわけでもないし、久しぶりの早起きのせいだろうか。吐き気まで催してきた。ペースを落とし騙しだまし歩くことにしたが、ついでに睡魔まで襲ってきた。これはだめだ。今日はとても朝日岳には行けないかもしれない。せめて白毛門くらいは行きたい。斜めに生えた木が目に付いたのでザックを降ろして木にもたれた。そして目を閉じた。一瞬意識を失ったのだろうか、ふと我に返った。心なしか気分が回復したような気がした。気を持ち直して再び歩き出す。まだ「ヒノキのウロ」にも着いていない。歩くにつれ体調は普段に戻ったようだ。急峻な登りと言われる登山道も先入観が強かったせいか思いのほか苦にならない。ヒノキのウロを過ぎてちょっとした広場で小休止、松の木沢の頭を目指す。
 ずっと音だけが聞こえていた白毛門沢の「タラタラのセン」と呼ばれる滝も見えてきた。木の根の張りだした登山道をとにかく上る。今日は初めてストックを使っての歩きだ。白毛門までの急登を少しでも負担を少なくと思い持ってきた。確かに膝にかかる負担が少ないようだ。
途中鎖付きの露岩を上り展望が開ける中、松の木沢の頭に着いた。先ずは谷川岳の東壁に目をやる。生憎の曇り空でやや霞んではいるが、素晴らしいパノラマだ。一の倉沢の雪渓が一際目を引く。何枚となく写真を撮るが結局霞んでだめだった。稜線に眼を戻せば白毛門が早くおいでと待っている。最初の目的地、白毛門に急ごう。直下の岩壁にジジ岩・ババ岩が大きく見える。きっと大きい方がジジ岩だろう。ジジババ岩を過ぎ明るく展望も開けた道を行くと、何やら白い花。ウメバチソウがいくつも咲いている。辺りを見回せば草原になっている。この辺りも夏にはちょっとしたお花畑になるに違いない。やがて笠ヶ岳が姿を見せるようになると白毛門山頂に着いた。
ジジ岩、ババ岩

白毛門山頂から笠ヶ岳を望む
 山頂には一部山名に誤りのある方位盤と、古いピッケルが埋め込まれた慰霊碑が置かれていた。360度の展望。すっきりと晴れ渡っていれば本当に大展望なのだろう。まあ、曇り空の中承知で山行に来たわけだから仕方がないけれど…。左が笠ヶ岳で右が朝日岳かな。遠く見えるけれど笠ヶ岳まで行けば何とかなりそうだ。俄然元気が出てくる(^^;)。ここで小休止。おにぎりを一つ頬張り準備を整え歩き出そうとすると二人連れのハイカーが登ってきた。話を聞いていると2時間10分でここまで来たらしい。自分より1時間も速い。途中調子が悪く時間がかかったとはいえこんなにも違うものだろうか?ここで腹ごしらえをすると言うのを聞いて先行することにした。
 笠ヶ岳の山腹には一本の道が付いているのが見える。急峻な道に見えるが、先ずは一旦下らなければならない。何回かアップダウンを繰り返してシャクナゲやハイマツの中を進むうちに植生が変わってくる。そしてコルに着く頃には森林限界を過ぎていた。さあいよいよ笠ヶ岳への上りに入る。山頂まで真っ直ぐに続く道だ。後ろを振り返ると先の二人連れが近付いてくるのが見えるが、まだ十分に距離はあるし追い付かれたりはするまい。何度か白毛門を振り返り呼吸を整えては一歩一歩登っていく。
 人の話し声が聞こえる様になるとひょっこり山頂に出た。リーダーらしき人の谷川岳東壁についての解説を聞きながら小休止だ。とんちんかんな質問あり、自慢話ありとなかなか面白い。振り返って朝日岳方面に目をやる。もう少しだな。左後ろにも山が見えるが、一体何という山だろうか、人が大勢見えるが…まさかね。

烏帽子岳から朝日岳を望む
 ようやく先の二人連れが到着、いい景色だなあと一言二言。それを聞いて先のリーダーが朝日岳もいいよーと、あそこに人が見える山が朝日岳…。え!…、まさか、やっぱりね。イヤな予感が的中してしまった(苦笑)。朝日岳は遠かった。では途中にある大きな峰々は何なんだ。地図を取り出して調べてみると烏帽子岳。ここを越えて行かねばならない。下調べの不備で予想外の事態。しかし朝日岳まで1時間ちょっとらしい。時間的にも全く問題ない。よくよく思えば白毛門からここ笠ヶ岳までも同じくらい遠くに見えた。さあ朝日岳のピークを目指して歩いていこう。
 一旦下るとカマボコ状の笠ヶ岳避難小屋がある。扉を開けてみると小綺麗で十分快適に泊まれそうだ。4〜5人ならゆったり出来るだろう。ここから更に下ると平坦な草原に出る。ここにはニッコウキスゲの群生地らしい。そして夏にはこの草原一帯、一面のお花畑になるに違いない。どうせ歩くなら花があった方がいいもの。いよいよ烏帽子岳の上りになる。1ピーク1ピーク越えていく。烏帽子岳のピークは巻いて進む。山頂への登山道はないし山頂標識もないのであろう。北側斜面は紅葉が始まっていた。時々笠ヶ岳方面を振り返ると稜線が素晴らしい。だんだん最終目的地の朝日岳が近づいてくる。

朝日岳山頂から笠ヶ岳さらに谷川岳
いよいよ最後の上りだ。山頂直下の大きな岩を目指して解放された斜面をジグザグと上ると、そこが朝日岳山頂だった。清水峠へと続く登山道は池塘が点在する広々とした草原の中を走っていた。開放感あふれる朝日岳のピーク、本当にここまで来て良かった。そして錦秋と呼ぶにはまだ早いかもしれないが、これから益々鮮やかさを増すであろう草紅葉が秋の始まりを告げていた。そういえばここに来るまでにもゴゼンタチバナ、マイヅルソウ、オオカメノキ、ナナカマド、ツルリンドウなどが赤い実を付けていた。

朝日岳北斜面
 展望はあいにくだ。谷川岳方面は比較的見えるが、平ヶ岳、燧、至仏方面は薄ぼんやりと見えるだけ。有名な山はかろうじて位置がわかる程度だ。それでものんびりと腰を下ろし広々とした空間にいる、ただそれだけでも十分だ。あの道標を右に折れると湯ノ小屋へ行くのか…、途中の紅葉が見事だと聞く。ゆっくりと時を過ごしたいが日帰り登山の身、来た道を戻らなければならない。重い腰を上げ、もう一度周りの景色を目に焼き付けた。白毛門からの下りはきつかった。膝はガクガク、つま先は痛みあと一息で東黒沢にでる手前でスッテンコロリ尻餅をついてしまった。帰りには谷川温泉「湯テルメ谷川」に寄り汗を流した。
ナナカマド ツルリンドウ イワショウブ(岩菖蒲) ウメバチソウ
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